バブルと言われて久しい中国経済だが、狂乱の宴もいよいよ終焉に近づいている。経済評論家の三橋貴明氏が、中国バブルの実態を喝破する。
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それにしても、現在の中国都市部の不動産価格は「高騰しすぎ」だ。何しろ、上海住民の年収はフランスのパリ市民の10分の1以下の水準であるにもかかわらず、同じ広さの部屋の価格はパリ以上。上海紙『新聞晩報』によると、中国の「房奴(住宅ローン返済負担に苦しむ人々)」の住宅ローン返済負担は、パリ市民の11倍にも達しているという。
中国の2009年以降の不動産バブルは中国人民の所得向上や、実需増加によって引き起こされたわけではない。単純に、投資(民間住宅など)を拡大し、経済成長を維持することで共産党政府の「体面を守る」「権威を維持する」ために、不動産市況がバブル化したのだ。まさしく「偽装バブル」としか呼びようがない。
何しろ、2009年春以降の中国不動産バブルは「6割が投機的需要」であった。中国人民が自ら住むための住居を買い求めたのではなく、企業などが銀行の新規融資を活用し、キャピタルゲインを狙った投資を中心にバブルが醸成された。投機資金を持たない一般の中国人民にとって、不動産バブルは単にローン負担で可処分所得を減らしただけである。中国の「偽装バブル」は、家計の可処分所得を減らし、GDP上の個人消費の抑制要因となり、かつ国内の格差拡大に貢献している。
中国社会科学院が2010年初めに発表した「社会青書」によると、同国のジニ係数(世帯間の所得格差を示す指標で0は平等、1に近づけば不平等を表す)は2008年の0.48から、2009年は一気に0.61にまで上昇した。ジニ係数は0.4が危険水域で、0.5を上回ると国内で暴動が頻発するといわれている。
中国の場合は、ジニ係数が低い段階から暴動が頻発しているが、今や同国の格差は「世界最悪の水準」にまで至ってしまった。その1つの原因が、不動産バブルによる「格差拡大」というわけだから、全く笑えない話である。
※SAPIO2022年2月9日・16日号