高齢化が進むにつれ家庭での介護には限界がでてくる。そこで頼りになるのが介護施設だ。だが、介護施設に入れば安心かというと、そうはいかない。
国民生活センターに寄せられる、有料老人ホームに関する相談件数も増加の一途で、2005年度に255件だったものが、2009年度には428件。うち8割が契約・解除のトラブルで、中でも入居一時金の返金を巡る苦情が目立つ。
「入居時に2000万円払って70代の母親を入居させたが、どうしても雰囲気になじめないというので、1か月で退去することに。ところが、90日以内なら入居一時金は全額戻ってくるクーリングオフ制度があるはずが、返ってきたのは1200万円だった」(Eさん・50代男性)
Eさんは抗議したが、老人ホーム側は「500万円は施設に入るための権利金で、一時金ではない」「残り1500万円のうち300万円は初期償却金で、1日でも入所すると必要になる」と説明。結局、1か月で800万円を失った。
Eさんがいうように、有料老人ホームの契約にはクーリングオフ制度がある。契約から90日以内なら、入居一時金は全額返還されるはずだが、「この制度は厚労省の指針であって、法的な義務はない。Eさんの老人ホームのケースのように、勝手に解釈して運用している施設もある」(有料老人ホーム経営者)という。
クーリングオフの義務化は、今国会でやっと議論が始まったばかりというから、お寒い限りだ。
ホーム入所後も安心はできない。
「月額の利用料がどんどん膨れ上がるばかり。催し物の参加料や、提携している病院への送迎費用、無料とうたわれていた温水プールも、使えば指導員の費用がかかる。300円のシャンプーの購入を頼んで、2000円も手数料を取られた」と憤るのはFさん(70代男性)だ。
月額の利用料は年金でまかなえるはずが、月によっては追加で5万円もオーバー。貯金を切り崩すことに怯える毎日だという。
※週刊ポスト2011年2月18日号