韓国で次期大統領の呼び名が高い、与党ハンナラ党の元代表・朴槿恵氏。盧武鉉(ノムヒョン)前大統領と激論を交わしたこともあったが、今年は彼女の動きに要注目だと、元産経新聞ソウル支局長の黒田勝弘は指摘する。
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韓国マスコミは年初から、早くも次期大統領選に向けた下馬評に余念がない。与野党の候補者群に対する支持率を競って伝えているが、いずれの世論調査でも与党ハンナラ党の元代表・朴槿恵が圧倒的人気だ。これはこの数年、変わっていない。
では朴槿恵はこの流れの通り、次の大統領に確実になれるか? 保守政権は延長するのか? しかし圧倒的な朴人気にもかかわらず、政界やマスコミを含め「イエス!」の答えはまだ多くない。
故朴正煕大統領の長女として、すでに20代のころから亡き母に代わってファーストレディを務め、政界に転じてからも10年以上になる。党代表もやり、選挙遊説ではテロにも遭遇している。
今やハンナラ党も李明博大統領も、彼女の意向抜きには物事が動かせないほどの力を持っている。そして彼女自身、李明博政権の政策には与党でありながら是々非々で対応し、自己主張が目立つ。次期狙いを念頭に、李政権との差別化を印象付けているのだ。
彼女の物腰や品格からすると、今すぐでも大統領をやれるだけの雰囲気がある。韓国で初の女性大統領となると、やはり彼女しかない。いささか先走っていえば“朴槿恵大統領”の誕生は、お隣日本にとっては「韓国にまたやられた!」となるかもしれない。政治も韓流へ?
しかし朴槿恵にとってゴールまでにはいくつかのハードルがある。まず女性というハンディ。女性が女性候補を意外に支持しないという伝統(?)を、どう打ち破れるか。
女性指導者として必須の「決断力とやさしさ」の持ち主というイメージを目指し、李政権の政策にも時に反対して「原則を守る断固とした姿勢」や、さらに最近は“福祉国家”論を主導して「やさしさ」を印象付けているが……。
しかし今後、最も大きな課題は対北朝鮮問題だ。煮ても焼いても食えない(?)北の金正日・金正恩独裁体制といかにタフに戦えるか。彼女は過去、1回だけ平壌を訪問し金正日総書記と会ったことがあるが、この「会ったことがある」という“情緒”に流されると北にしてやられる。
北に対しても「原則を守る断固とした姿勢」が貫けるか。原則と変化を調和させた、北にだまされない対北政策をどう構想するかが、最大のハードルだ。
※SAPIO2011年2月9・16日号