地方自治体や社会福祉法人が運営する特別養護老人ホーム(特養)には、長蛇の列ができている。特養に入るには、施設長、介護職員、ケアマネジャーなどで構成される「入所判定委員会」によって入所希望者の優先順位が決められ、「ウェイティングリスト」に載せられる。その順位は単に申し込み順ではない。要介護度のほか、独居老人や老老介護状態にあるなど、入所の緊急性も加味される。では、なるべく待機期間を短くするにはどうすればいいのか。
【1:「空いている地域」を狙う】
特養は住んでいる地域に関係なく、何か所でも入所申請ができる。そこで、本誌は47都道府県の特養の入りやすさを調べた。定員に対して申込者の少ない都道府県の施設を狙うのも一つの考え方だ。定員の何倍の人が入所を待っているかを計算すると、最も低いのは富山の0.291倍、高いのは三重の2.294倍と、10倍の開きがある。ただし、友人が多く、住み慣れた土地を遠く離れるのには不安がつきまとう。また、親族が面会に来るのも一苦労だ。三重(47位)に住む人が愛知(8位)、新潟(42位)の人が富山(1位)など、近県のランキング上位の地域を選ぶのが常道だ。
【2:待機している施設に介護状態を逐次連絡する】
ある特養の施設長はこうアドバイスする。「うちでは2か月に1度、判定委員会を開いてウェイティングリストの並べ替えを行ない、入所の緊急性が高まっている待機者を上位に移動します。ですから、待機中の状況の変化をその都度、施設に伝えることが重要です。待機中の希望者に連絡を取る施設はほとんどないので、定期的に家族やケアマネを通して施設側に連絡を取るといいでしょう
【3:同じ運営母体の病院、有料老人ホーム、在宅サービスを利用する】
特養の主な運営者である社会福祉法人は、有料老人ホームや病院、介護サービス事業などを同時に行なっていることが多い。社会福祉法人の役員がいう。「系列の有料老人ホームや在宅介護サービスなどを利用すれば、特養側に利用者の介護状況が伝えられることがある。情報が多ければ多いほど、判定委員会で有利になる可能性があります
【4:特養のショートステイを利用する】
特養では、在宅で介護を受けている人向けに、1週間程度入所して、介護や機能訓練などを受けられる短期入所(ショートステイ)サービスを提供している。申し込みをしている施設のショートステイを利用することも効果があるようだ。「正直、特養のスタッフにとって、同程度の緊急性であれば、どのように扱えばいいかを前もってわかっている人を入所させる方が楽です。だから、判定委員会では、スタッフからショートステイを利用している人の情報が詳しく説明されます」(前出の施設長)
※週刊ポスト2011年2月18日号