これまで大相撲に「八百長なんてなかった」といってきた人々が、急に宗旨替えをするからボロが出る。「7勝7敗の力士が勝ち越すから怪しいと思っていました」
今さら、本誌週刊ポストが30年前に感じた疑問を口にする“評論家”がゴロゴロ出ている。本誌記事を読んで勉強したとすれば、それは結構な話だが、「注射力士」たちは新たな手法を次々と考え出している。最新の「八百長トレンド」をスッパ抜く。
過去3年間に千秋楽を7勝7敗で迎えた幕内力士が勝つ確率は、2008年61%、09年73%、10年57%である。
今年の初場所では、該当する6人全員が勝ち越した。瀬戸際の給金相撲(勝ち越しが懸かった一番)で気合いが入るとはいえ、こうした数字を見ると、「千秋楽を7勝7敗で迎えた力士の勝率」は、確かに不自然に高い。
だが、「7勝7敗力士が勝つ」という疑問は、30年以上も昔から囁かれてきた話である。
最近引退したばかりの元力士が笑う。「近年は千秋楽を7勝7敗で迎えるのをむしろ嫌がる力士が多い。『週刊現代』との裁判には勝ちましたが、八百長に対する世間の疑いの目は強くなっているから、協会は監視を厳しくしている。また、昨年初めに、現役時代はガチンコ横綱として有名だった貴乃花親方が、八百長を監視する監察委員長に就任した(現在は審判部長)。ただでさえ目立つ千秋楽で露骨な注射はできなくなっている」
そもそも、7勝7敗で千秋楽を迎えれば勝てるという状況ではない。あるベテラン力士が語る。
「そんなの、大昔の話ですよ(苦笑)。昔は10日目を過ぎると、番付の地位で残り5日間の相手が読めた。ですが、『ポスト』の八百長追及を受け、協会は1991年の初場所から、千秋楽にわざと7勝7敗同士を対戦させるようになった。それではまず八百長はできないし、仮に成立したとしても、星を買う額が跳ね上がる。だから、念には念を入れて、勝ち越しを急ぐ7勝7敗の千秋楽ではなく、6勝6敗くらいの段階で画策することが増える」
この証言を元に、本誌は「6勝6敗」で13日目を迎えた力士が、その場所を勝ち越す確率を調査した。
結果は、勝ち越した力士が2008年は63%、2010年では65%と、7勝7敗の勝ち越し率を上回った。
「13日目」が怪しい理由にはこんなものもある。
「13日目で勝ち越しのメドがつけば、残りは星を回して、来場所の保険にすることができる。8勝6敗で千秋楽なら、比較的監視の目も緩い」(前出のベテラン力士)
ならば、調べてみた。この結果も興味深い。
「6勝6敗で13日目」の力士のうち、この3年間の勝敗と最終成績は、「13日目○、14日目○、15日目●で、8勝7敗」が最も多かったのだ。2008年が20%(40人中8人)、2009年が28%(39人中11人)、2010年が23%(40人中9人)。証言と一致している。
勝ち負けの確率が同じだと仮定すれば、本来は12.5%しか起きないはずだから、この結果は明らかに異常である。
※週刊ポスト2011年2月25日号