大相撲存亡の危機を招いた八百長疑惑。一口に八百長といっても古い手法もあれば新しい手法もある。最新の「八百長トレンド」とは何か?
勝ち越しを諦めた力士の中には、大きく負け越して星を売っておく者もいる。ある若手親方が語る。
「露骨なのは引退直前の力士です。引退を決めた場所の前、数場所の勝敗を見ると一目瞭然で、大きく負け越していることが多い。引退までの最後の数場所は星を売り、その仲間が祝儀で買い取る慣習があるからです」
近年の「八百長トレンド」では、この「仲間」が大きな意味を持つ。
「我々が現役だった時代の板井さんのように、横綱や三役にまで影響力のある中盆(なかぼん・八百長の仕切役)がいない。幕内でもいくつかの小さなグループに分かれていて、いざという時にはその仲間内で星を回しているようです」(同前)
今回の八百長関与が疑われている14人のうち、4人が同じ大学出身だったのは偶然なのだろうか。また、「仲介役」とされる恵那司も、この大学出身の親方の付け人を長く務めていた。
外国人力士でもモンゴルが2派閥、そして東欧グループとあり、互いに牽制しあっている。八百長をするために集まったわけではないにせよ、仲間内では“互助精神”や“もたれ合い”が生まれても不思議ではない。
だが、皮肉にもこんなことが起きる。最近引退した元力士がいう。
「グループが小さくなれば、星を回し合う余裕はなくなる。角界中に顔のきく強力な中盆がいた頃は、その人に頼んでどこからでも星を回してもらうことができたが、今はそれは不可能。運が悪いと、仲間が全員幕尻近くに集まり千秋楽に勝ち越しが懸かるなんていう最悪の状況にもなりかねません。千秋楽を待たずに八百長の算段が行なわれるのは、そうした状況を防ぐ“保険”としての意味もあると思います」
元力士らの告白にもあったように八百長はいつの時代もなくならない。注射力士とそれを監視する者のイタチごっこは、脈々と続いてきたのだ。
※週刊ポスト2011年2月25日号