この就活地獄の中、「自衛隊」が多くの企業からラブコールを受ける“超優良学校”であることはあまり知られていない。採用担当者たちは、なぜ自衛隊出身者を高く評価するのか。
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自衛官を採用する企業にそのメリットを聞くと、実に様々な感想が寄せられた。まずは、「リーダーシップ」である。ビルメンテナンス会社「東京美装興業」の人事部教育課長で、自身も元自衛官の上田正文氏が語る。
「自衛隊は集団生活。訓練もチームで行ないますから、自ずとリーダーシップが身につきます。例えばチームで行動する場合、1人でも脱落したら全体が失格、ペナルティを受ける。結果、各々が迷惑をかけないようスキルアップを図るようになる。
その一方で、初めての人の集まりでも各々の特性を見極め、役割分担をさせチームで成果を出すことが得意。自衛隊ではいつもリーダーを決め、個々人の任務を決めて動く訓練を行なっていますからね」
同社人事部長・山田勇氏が続ける。
「すべてがマニュアル化され、答えをすぐに求める昨今の若者と異なり、自衛隊員には自立して行動するサイクルが身についていると感じる。それも、こうした集団生活の背景があり、任務を中途半端でなく“完結”することが求められるからでしょう。弊社ではこの“任務”はビルの清掃などに当たりますが、誰も見ていないところでもきちんと仕事を果たしてくれる安心感がありますね」
この「任務完遂能力」は多くの企業で称賛されている。電気工事会社「六興電気」社長の長江洋一氏はこう話す。
「最近の学生はテストでの得点が60点以上で合格できるので、100点を目指さない。落第点でも後でレポートを出せばいい、という大学も多い。自ずと仕事に対する甘さが出てきます。我が社では新入社員に自衛隊体験入隊を課しているのですが、苦しい訓練を100%やり切る達成感を味わうことで、60点ではダメということを学ばせています」
また、自衛官の「マナーや身だしなみ」を評価する声も多かった。自衛官の再就職を受け入れている企業の団体、「入間基地退職者雇用協議会」の豊田義継会長はこう語る。
「最も期待しているのは、『言葉遣い』と『立ち居振る舞い』です。最近の若者はマナーを一から教えなければならないが、自衛官は訓練で身についている。外回りは当然のこと、内勤でも社内の人間関係を築く上で大変重要です。周囲の新人への手本となる波及効果も期待できるし、マナーについて何も懸念なく採用できると各社が口を揃えています」
※週刊ポスト2011年2月25日号