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認知症患者は「漫才のボケ」と割り切ることも介護のコツ

 1992年に映画監督としてデビューした河瀬直美さん(41)。1997年には『萌の朱雀』でカンヌ国際映画祭カメラ・ドール(新人監督賞)を受賞、さらに2007年の同映画祭では『殯(もがり)の森』で審査員特別大賞を受賞した。順調に映画監督のキャリを重ねていく一方で、私生活では2001年から認知症の養母を介護している。

 周囲からは「強くて明るい人」というイメージをもたれることが多い河瀬さん。そのため、介護がつらくてもなかなか弱音を吐き出すことができなかった彼女は、長い苦しみを経て人を頼ることの大切さを学んだという。

「家族だけで介護を抱え込もうと思わず、地域や他人を頼ればいい。甘えればいいんです。本当に『私、無理です』っていっちゃうとか。日本は女性が介護や家の中のことを全部やるという風潮がまだ強いけど、人を頼ればいいんですよ」(河瀬さん)

 現在、河瀬さんは歩行や食事が困難になった養母をグループホームに預け、時間の許す限り面会に訪れている。

 実際に親が認知症になったらどうすべきだろうか。介護アドバイザーの青山幸広さんは、河瀬さんのように“身近ゆえに苦しむ”ことは当然という。

「元気なころの父や母のイメージが強いので、身近だからこそ“なぜこんなことに”とやりきれません。オムツの交換や徘徊の監視を一生懸命やるほどつらくなります。現実を受け入れて、認知症は赤ちゃんに戻っていくことだと納得し、“お母さんはこんなふうに変わっていくんだ”と楽しむ気持ちが大事です。漫才のボケの人なんだ、そんなふうに、気持ちを切り替えてみることも大切なんです」(青山さん)

 河瀬さんのように“頼る姿勢”も必要だ。

「施設に預けることをマイナスと思う人が多いですが、ひとりで抱え込むのはいちばんよくありません。介護は誰かに相談できないとすごく苦しいもの。デイサービスに預けているときにお茶会をするなどのガス抜きは、すごく大事です。預けることに自責の念があっても、時間のあるときに面会に行けばいいんです」(青山さん)

介護と仕事、子育てを“三立”し、無理なく続けていくためには、ヘルパーやデイサービスを上手に使うことが大切だ。100%完璧な介護などないのだから。

※女性セブン2011年2月24日号

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