少子高齢化に伴って医療、年金、保険制度……高齢者を取り巻く“環境”は悪化している。それを何より敏感に感じ取っているのが当人たち。“ニッポンの大問題”を確かめるべく、高齢者100名余にアンケート取材を実施してみると嘆息、小言が出るわ出るわ。一人は、こう怒りをぶちまけた。必死に頑張って国をここまで豊かにしてきた世代を“逃げ切り世代”とは何事ぞ――。
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●タッチパネルに向かって「バカにするな」
4人に1人が65歳という日本では“IT社会化”が、街中で軋みを生んでいる。特に高齢者にとって一番の難敵はタッチパネル式機械だ。
「駅で券売機を操作していたが、指が乾燥しているから何度押しても反応がない。つい券売機に向かって、『バカにするな』と叫んでしまった」(元会社員・78)
●思い出を再生できない
やはり安心して操作できるのは、かつてのアナログ機器だ。元公務員(79)が語ってくれた。
「我々世代は、音楽ならカセットテープ、ビデオならVHSを使ってきた。だから、やはりアナログ機器を一番信頼している。でも、気がつけばCD、MD、DVDと次々に記録媒体がかわり、昔の思い出が詰まった作品を再生する機械もなくなってしまった」。ビデオだけではなく我々も取り残されてしまった、と元公務員は苦笑した。
●古道具屋でテレビを買う
『高齢者は暮らしていけない』の著者で、淑徳大学総合福祉学部准教授の結城康博氏も最新家電について、高齢者の目線を欠いている、と問題視する。
「私の知る高齢者は、テレビのリモコンが複雑で分からないといって、わざわざ古道具屋で古いテレビを買ったそう。電子レンジにしてもボタン一つで動く単純なレンジも少なくなった」
●高齢者用ケータイは「ありがた迷惑」
一方、利用層を高年齢に設定したのに、槍玉にあげられる場合もある。関西在住の主婦(63)が苛立たしげにいう。「携帯画面の文字が見えにくくなったので、高齢者用ケータイを購入したところ、操作ガイドがいちいち出て、余計に使いづらい。ありがた迷惑よ」。押しつけの“親切”は、逆効果を生む。
※週刊ポスト2011年2月25日号