アメリカのオバマ政権は昨年11月に経済戦略を大きく転換し、ドル安誘導には終止符が打たれた。ドル円相場にどのような影響がでるのか、海外マネーの動向に詳しいパルナッソス・インベストメント・ストラテジーズの宮島秀直氏が解説する。
* * *
昨年11月に、ガイトナー財務長官が、突然、「強いドルは米国の国益に適う」と発言した。
この“強いドル発言”は、リーマン・ショック直前に発して以来、2年2か月ぶりのもの。この直前まで、人民元に対して切り上げを求める発言を繰り返しており、あまりに唐突だったため、市場はコメントを消化しきれなかったが、この発言の真意とは何だったのか。
ドル安による輸出増での景気回復を狙ったサマーズ国家経済会議委員長の解任がこの時期に決まり、米国のドル安誘導にも終止符が打たれたのだ。オバマ政権は、産業界との関係を修復し、潤沢な手元資金を設備投資に投じてもらい、それを経済成長のメインエンジンにすることにしたのだ。
ただし、設備投資を行なって作られる製品は、輸出して海外市場でも売らなくてはならないため、大幅なドル高にもできない。当面、1ドル=81円50銭~84円50銭といった、狭いレンジで推移する可能性が高い。
※マネーポスト2011年3月号