大学生の学力低下が叫ばれて久しい。大学進学率が上がったことや小中高で「ゆとり教育」が導入されたことなどが原因と指摘されるが、実際の大学を歩くと、その深刻さは「学力低下」という言葉では表わせない。そもそも「学ぶ意欲がない学生」ばかりなのだ。大学も困っている。勉学に興味のない学生は退学率も高く、退学者が増えれば授業料収入が減り、大学のイメージダウンを招いて入学者も減らす。そこで、最近の大学は、学習意欲のない学生を引き留めるために、あの手この手を繰り出している。
関東にある某私大では、数年前から「担任教員制」を導入した。学生を40人程度のクラスに振り分けて、1人の担任をつけるというものだ。担任が週1コマ行なう授業は「キャリアデザイン」と呼ばれ、なぜ勉強が必要なのか、なぜ大学に通うのか、大学に通うことが将来にどう活きるのかを話し合う。やっていることは小学校の「ホームルーム」と同レベルだ。
担任には、さらに重要な役割がある。欠席が続いている学生がいれば、自宅や下宿に連絡して、会う約束を取り付ける。何とか研究室に呼び出して「最近悩んでることはあるのか?」「学校はいいところだぞ」とフォローをするというのである。
友達の作り方を教える、というのは都内に複数のキャンパスを持つ某私大だ。入学したらすぐに海や山で「新入生合宿」を行ない、学友作りのサポートをする。教職員が、学生を六大学野球の観戦や箱根駅伝の応援に引率することもあるという。職員はこう嘆いた。
「大学に通うのは楽しいと思ってもらわないと、研究どころではないし、大学の経営も成り立たない。実際、こういったやり方には“小学生のお守りをするために大学教授になったんじゃない”と反発する先生もいます」
※週刊ポスト2011年2月25号