原発の切除困難な大腸がんの腸狭窄には、従来人工肛門の造設が行なわれる。しかし、全身麻酔による開腹手術が必要なため、特に末期がんの患者には心身の負担が大きい。そこで狭窄部分を通すために、大腸にステントを留置する治療が導入された。開腹手術をしないので患者の負担が少なく、数日で食事ができるなど、QOL(生活の質)も改善できる緩和ケアの一つとして期待されている。
大腸がんやその他のがんのため、大腸が圧迫され狭窄が起こると腹痛や圧迫感などで、身体的、精神的苦痛を感じる。狭窄の切除が不可能な場合、従来は人工肛門を造設することが多い。しかし、人工肛門は全身麻酔による開腹手術をする上に、使用に慣れる必要があるなど、特に末期がん患者にとっては心身ともに負担が大きい。そこで近年、大腸の中にステントを留置することで狭窄を改善する治療が実施されるようになっている。
2005年から2010年までに大腸ステントを留置した治療結果を発表した、市立豊中病院(大阪府豊中市)下部消化管外科の畑泰司医師に話を聞いた。
「今回は根治術が不可能な、大腸に閉塞をきたしたがん患者(胃がんや子宮がんが原因の場合も含む)19名に対して、大腸ステントを留置しました。ステントは異物なので長期間置くと弊害もあるため、余命半年で狭窄解除の手術が困難、もしくは人工肛門よりステントを強く希望する患者を対象としています。留置すると狭窄が改善され、楽になるだけでなく、食事もできるようになり、退院して家で過ごせるようになった人もいます」
※週刊ポスト2011年2月25日号