韓国では年初から“核保有論”が議論になっている。最有力紙の朝鮮日報(1月11日付)に掲載された金大中論説顧問のコラム「南が核を持ってこそ北は交渉に応じる」がそれだ(先に亡くなった元大統領とは同名異人)。さらには「日韓共同で核開発」論も登場している(1月18日の平和放送インタビューでの金容甲・前議員発言)。
産経新聞ソウル支局長の黒田勝弘氏がレポートする。
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韓国で「北に対抗してわれわれも核開発すべき」とする声は近年、しばしば聞かれる。保守派の論客であるコラムニストの趙甲済氏などはその代表で、国会議員の発言にも時々、登場してきた。
しかし今回の金大中氏は韓国でもっとも影響力を持つ言論人であり、最有力紙での堂々の主張だ。世論の底流として共感がじわり広がっている。
金大中氏の論説は、内外の誰もが「金正日政権は決して核は放棄しないだろう」と思っているのに、対北六か国協議など話し合いで問題解決を進めようという“虚構と偽善”“自己欺瞞”を痛烈に指摘している。
とくに北朝鮮に核放棄を迫らない中国を動かすには、韓国が核保有するしかないという。また米国の「核の傘」は、中国の核の脅威を考えると韓国保護のため使われることはないという。
そして「20年以上にわたって北朝鮮の核問題一つ処理できない大国の無能と限界に、われわれの安全を任せることはできない」ため、韓国が核保有して北と中国に迫るしかないという。
ただ「韓国の核は攻撃用でも防衛用でもなく、南北均衡のための牽制用であり対北交渉用である」とし「六か国協議で北朝鮮に核廃棄の期限を設定し、それが守られない場合、われわれも核開発に着手する」と宣言してはどうかというのだ。
もちろん対米関係など韓国の置かれた国際環境を考えれば、現実問題としては難しい。しかし理屈としては正論である。六か国協議の現状や中国の態度に対する不満、イラ立ちとして十分理解できる。
※SAPIO2011年3月9日号