「2011年はいよいよ日本株の大きな上昇期待が高まっている」というのは経済アナリストの森永卓郎氏。森永氏がその根拠を解説する。
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足下の経済データでは、日本経済に明るさが増していることが見て取れます。生産面では、2010年11月の鉱工業生産指数は997.0%と1年前の91.7%より5.3ポイントも増加。製造工業生産予測指数も2010年12月は前月比3.4%の上昇、2011年1月は3.7%の上昇と、大幅な生産増が見込まれています。
生産面の好調は、労働市場にも波及効果をもたらしています。失業率の低下はまだわずかですが、リクルートエージェントが調査した2010年11月の中途採用求人数は前年同月比24.5%も増えています。
賃金面でも、毎月勤労統計で見ると、2010年11月の定期給与は前年同月比0.3%のプラスとなっています。1年前がマイナス1.5%だったことを考えれば、大きな改善といえます。
さらに、最も注目すべき変化は物価です。2010年11月の消費者物価指数(生鮮食料品を除く)は、前年同月比では0.5%のマイナスとなりましたが、1年前はマイナス1.9%。1年間で物価上昇率が1.4ポイントも高まったことになるのです。しかも、2010年9月はマイナス1.1%だったので、日銀が金融緩和策を決定した10月以降、デフレが急速に収束してきたことを如実に物語っています。
ただし、日本がデフレから完全に脱却するためには、日銀が決めている5兆円という資産買い取り枠では、いかんせん少な過ぎます。完全脱却を果たすためには、50兆円規模が必要だと考えています。
では、実際に日銀がそこまでの拡大に踏み切るかどうか。それは、政府が日銀法を改正してでも、それを日銀に迫れるかどうかにかかっている。私は菅総理は金融緩和をやりたいのだと思います。
政権運営責任者として内政も外交もボロボロ状態の菅総理がとれる政権延命策はただひとつ。日本の景気をよくすることです。そのため、菅総理はなりふり構わず、日銀に資金供給拡大をせまるはずです。ただ、新たに内閣に加わった与謝野氏や枝野氏、藤井氏は金融は金融緩和に否定的です。
そうしたシナリオが実現するかどうかは、菅総理のリーダーシップにかかっています。しかし仮に、日本がデフレから脱却すれば、日本の景気が劇的によくなるのは間違いありません。資産価格も急騰するはずです。
そもそも日本株は世界で一番出遅れていたこともあり、デフレ脱却の暁には一気に上がる。日経平均株価は2011年末には1万6000円程度まで上昇してもおかしくない。為替相場も1ドル=90円台まで円安に振れ、製造業は儲かり、雇用も所得も消費も改善するといった、“逆バブル”が解消する過程で大きなプラスの経済効果が出てくるはずです。
※マネーポスト2011年3月号