現在、新聞やテレビで報道されている八百長のプロセスをまとめるとこういうことだ。優勝や昇進がかかった時、または場所で負け越して降格しそうな時に、対戦相手に金を払ったり、次の場所での負けを約束したりすることで、勝たせてもらう。これだけ聞くと、「八百長は仲間内の話」のようにも思える。
だが、週刊ポスト誌で八百長を告発してきた元小結の板井圭介氏は、著書『中盆』(小学館刊)の中で、今回の角界スキャンダルの「本丸」に迫る重要な指摘をしている。
〈相撲賭博によって、私は日々の八百長情報に精通するようになった(中略)。この相撲賭博は暴力団の介在する完全な博打だったのである〉
八百長は「仲間内のやり取り」にとどまらず、暴力団の介入を招き、「相撲賭博ネットワーク」として広がっている――板井氏はそう証言したのだ。
現役時代、板井氏に近かった元力士がいう。
「最初は仲間の中だけで競馬や競輪、野球で賭け事をしていただけだが、賭け金が大きくなると、資金力のある外部の暴力団関係者が胴元として入り込む。そこで借金が膨らんだ力士が、胴元の相撲賭博に協力し、彼らが都合良く勝てるように八百長に加担させられるようになる。つまり、“バクチの借りを星で返せ”と脅されるんです」
野球賭博で負けが込んでいた元大関・琴光喜の携帯電話のメール記録から、相撲賭博を匂わせる文面が出てきたことはこの証言と符合する。
※週刊ポスト2011年3月4日号