ペットと人間の共生が進むことでズーノーシス(人獣共通感染症)の危険性が高まっている。有名なのは狂犬病で、予防ワクチンの接種は、日本の飼い犬の4割程度にしか実施されていない。『危ない!ペットとあなたを感染症が襲う』の著者で、獣医の伊東彰仁氏(52)は語る。
「狂犬病接種率の低さは、象徴的ですが、実際に問題なのはもっと身近なズーノーシスです。例えば『ネコ引っかき病』や『イヌ・ネコ回虫症』などでしょうか。これらは動物病院などできちんと予防できるのですが、必要な予防対策をしていない人は狂犬病より多いでしょうね」
■「ネコ引っかき病」
猫に引っかかれたり咬まれたりすることで人間が発症する。リンパ節が鶏の卵大に腫れるなどの症状が現われるという。飼い猫の7%が病原体を持っており、ノミを媒介として猫同士で感染する。治療のポイントはノミの駆除。
■「イヌ・ネコ回虫症」
犬や猫の体内にいる回虫の卵がフンを経由して、人間の口から体内に入り、孵化することで発生する。回虫の幼虫は人間の体の中では居場所がなくさまよい、いずれは死滅するが、その前に眼球や中枢神経に移行すると大変に危険。予防のポイントはペット体内の定期的な回虫駆除。
※週刊ポスト2011年3月4日号