政治家もメディアも「世論調査」の数字を根拠に政局や政策を論じるが、果たしてその「世論」は信頼に足るものなのか。調査対象のバランスの歪みや、誘導的な質問方法などを問題視する声も少なくない。ノンフィクションライターの窪田順生氏が、こうした世論調査のあり方に疑問を呈する。
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世論調査について一つ提案がある。報道各社はいっそ、「世論調査」という看板を下ろしたらどうだろうか。様々な疑問のある実態からは正直なところ、「世論調査」という報道ではなく、「朝日在宅者アンケート」「共同電話リサーチ」などと呼ぶ方がしっくりくる。
「世論」を語るからややこしいのであって、〈小沢元代表「辞職を」56%――読売在宅者アンケート〉ならば惑わされない。
たとえば、昨年9月に読売新聞が行なった“アンケート”などはその典型だ。
〈最近、インターネットの利用者が増えていますが、あなたは、情報や知識を得るために、新聞はこれからも必要だと思いますか、必要ないと思いますか〉
こう問われれば、「たしかにネットができないお年寄りもいるわけだから新聞はあった方がいいよな」とほとんどの人は思う。「判官びいき」に代表されるように、日本人は弱者に優しいからだ。
そんなワーディングが読売新聞の見出しではこう生まれ変わる。
〈「新聞は必要」92% 本社全国世論調査〉(2010年10月15日付)
こういうこすっからいことをやめない限り、いつか本当に「新聞などいるか」とそっぽを向かれることにそろそろ気づいた方がいい。
※週刊ポスト2011年3月4日号