マタ・ハリ以来と言っても過言ではない美人スパイ騒動を引き起こしたアンナ・チャップマン。
「スパイとして重要で、しかもインテリジェント諜報員としての役割を果たしたといえる痕跡はどこにもない」などという専門家の冷静な指摘もどこ吹く風。スパイ大作戦は失敗したが、自らの売り込みは絶好調である。
昨年10月には突如として男性誌『MAXIM』ロシア版で表紙を飾り、セクシーショットを披露。今まで隠れることが多かったスパイ稼業の反動か、これでもかというぐらい露出している。
さらに宇宙関連企業と取引がある投資銀行の顧問に就任し、バイコヌール宇宙基地を勝手に・視察・(観光)。ロシア連邦宇宙局が「私的な訪問。我々とは一切関係ない」と不快感を露にした。
1月21日にはついに民間テレビ局Ren TVで、司会を務める新番組「アンナ・チャップマンと世界のミステリー」がスタート。同局によると「ロシアで最もミステリアスな女性がお届けする、最もミステリアスなテレビショー」だそうだが、「これから全ての秘密をお見せしましょう」という棒読みの司会は、池上彰には遠く及ばない。
1月末には、ロシア特許商標庁に自身の名前を商標登録申請して、認められた。ウォッカ、化粧品、腕時計などのブランドを立ち上げるのではと言われている。アメリカではすでに“アンナ・チャップマン人形”が勝手に作られ登場しているが、近く「オフィシャルバージョン」が登場すると見られる。欲しいか?
だが何より、現実の彼女自身が、プーチン首相が党首を務める最大与党・統一ロシアの青年組織「若き親衛隊」の運営委員となり、愛国心を煽る宣伝係として「プーチン首相の玩具」であるとの指摘も。
はてさて、このバブル、いつまで続くか。
※SAPIO2011年3月9日号