『苦役列車』で第144回芥川賞を受賞した西村賢太氏。受賞の際は「そろそろ風俗に行こうかなと思っていた」などと語り話題となったが、作中の貫多を「(父親が逮捕された)11歳の時点でレールが敷かれちゃってる(中略)僕自身そんな感覚が、今でもありますね」と語る。西村氏は芥川賞受賞後、なにを思うのか?
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「そう。僕の小説で一番の価値は“負のオーラ”だと思うんですよ。それを込められなくなったら並以下の作家に成り下がるしかない。
ただ芥川賞は一応世間的にはすごい賞だと思われているフシがあるから、それを貰っておいて苦役というのも、いい気な話になってしまう。受賞後の会見で『自分よりダメな人間がいると思ってもらえれば書いた甲斐がある』云々と夜郎自大なことをいいましたが、それもちょっとおかしな話になりかねない。けど、賞は所詮一過性のことで、またすぐに僕の体からは暗い“負のオーラ”が立ちのぼりだしますよ。そういう生き方しかできませんから」
●構成/橋本紀子
※週刊ポスト2011年3月4日号