竹下正己弁護士の法律相談コーナー。今回は、「高齢の伯父の遺言書を、親族が代筆することはできるのでしょうか?」と、以下のような質問が寄せられた。
【質問】
結婚せず、ずっと一人暮らしの伯父が病気です。事業による多額の財産を築いているので、遺言書を書くことを勧めているのですが、高齢のため、兄弟かその息子が代筆することになると思います。このような親族の代筆による遺言書は認められるのでしょうか。書き方や届け方について教えてください。
【回答】
特別な手続きを取る以外、代筆の遺言は無効です。遺言の種類には「自筆証書遺言」「秘密証書遺言」「公正証書遺言」の3つがあります。「自筆証書遺言」は、遺言者本人が遺言の内容を日付、氏名を含め、全文自筆で書いて押印する必要があるほか、加除する場合についても、一定の方式が求められています。
「秘密証書遺言」では第三者が遺言の内容を書くことは可能ですが、自分で署名して押印した上、押印した印鑑で封印し、公証人と証人2人の前に提出するなどの手続きが必要です。「自筆証書遺言」も「秘密証書遺言」も、相続開始後に家庭裁判所で遺言書の検認を受ける必要があります。
「公正証書遺言」の場合は、公証人が、本人であることを確認した遺言者の話す遺言の内容を聞いて、公正証書による遺言書を作ってくれます。遺言をするときには、証人2人が必要ですが、死亡時に家庭裁判所の検認は必要ありません。なお、この証人には相続人になる人やその子供などはなれません。
遺言は、死後、偽造ではないか、本人に遺言能力がなかったのではないかなどと、争いになることが少なくありません。その点、公正証書遺言は、公証人が本人の意思を確認して遺言を書き留めるので、確実なものとして信頼できます。また、遺言書は紛失したり、隠匿されたりすることもありますが、公正証書遺言の場合、遺言の原本は半永久的に公証人役場に保管され、遺言の存否も全国の公証人役場からオンラインで確認できる仕組みになっているので安心です。
なお、公証人は病気などで外出できない場合でも、要請すれば出張してもらえます。費用などは、相続財産の額によりますが、特に高額ということはありません。最寄りの公証人役場に相談されるのがよいでしょう。
※週刊ポスト2011年3月4日号