プロ通算224勝140敗。現役最多勝の工藤公康投手(47歳)も今季は所属球団未定だ。彼はなぜ現役にこだわるのか。作家・増田晶文氏が工藤投手に迫った――。
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工藤公康はこの5月5日で48歳になる。それでも彼は挑戦をやめない。海外も視野に現役続行へ熱い意欲を示した。
ところが2月半ば、工藤は苦渋の決断を下す。
「今季は充電にあてる」――要因は昨季に傷めた左腿の裏側で、ここをかばって右ふくらはぎにまで痛みをおこしているのだという。
「今は投球練習もできない状態ですが、悪いところを治しながらトレーニングをする方法はわかっていますからね」
工藤は、諦観の境地に達しているのかと思えるほど、さばさばと語った。「現役にこだわる理由をよく聞かれます。僕は野球しか能がないし、投球術や体力にまだ自信が持てることもありますが、やっぱり自分の人生なんですから、幕引きは球団じゃなくて、僕自身でけじめをつけたいんです」
工藤は付け加えた。
「僕にとっては毎年、毎年が勝負です。だから現役最多の224勝とか“優勝請負人”と呼ばれた過去は関係ない。実績をふりかざして勝てるわけじゃないし、プライドってやつには持っていていいのもあれば、棄てちゃったほうがいいのもあるということです」
もし、工藤にケガがなければ、今季はどんな形で投げていたのだろう。「日本の球団からの声を待っていましたが、充電宣言を出す直前までオファーはありませんでした」。
あるいは、選択肢をアジアや独立リーグに広げることもありうるのか。工藤は思案しつつ慎重に答えた。
「韓国のレベルの高さは大いに認めています。国が違えば野球も違うのは当然なので、韓国野球の持つ魅力は、ちゃんと勉強しておくべきだとは思います。でも、今の時点で韓国という選択肢はないし、まして国内の独立リーグの線も考えていません」
ならば目標となるのは――工藤はアメリカのマイナーリーグを睨んでいた。
撮影■渡辺利博
※週刊ポスト2011年3月11日号