国内

「トイレ掃除させて下さい…」200軒訪問し涙流して便器磨く

 新興宗教の儀礼の中には、一般的には理解されにくいものもある。それらには実際どような意味があるのか、慶應義塾大学准教授の樫尾直樹氏が解説する。
 
 * * *
 新宗教の信者は早朝駅前で掃除しているという話をよく聞くだろう。通常、奉仕活動の一環である掃除は、儀礼とは言わないかもしれない。とはいえ、「行」は定められた身体実践を反復、継続する(例えば座禅を組むなど)ことによって自己と向き合うことである。だとすれば、ゴミを拾い続ける清掃活動も広い意味では儀礼であり、「行」だと言える。

 実は、多くの新宗教団体にとって掃除は定番の「行」であり、大半の教団が実践している。教団にとって掃除の意義とは、信者の精神を向上させること。すなわち、己の魂を磨くことにある。掃除を通して、自分の心を清めるのだ。

 私は真如苑の早朝清掃奉仕の体験取材をしたことがある。早朝5時半頃から真如苑の本部がある立川駅前でゴミを拾った。真如苑は全国数百か所の駅前で、毎朝、清掃奉仕活動を行なっているのだ。こういった奉仕活動は、確かに自分自身を振り返るよい機会になる。ゴミ拾いを反復すると、次第に夢中になり、はたと気付くとゴミを拾いながら「救いがそこに落ちている」といった信念を抱き始めるようになることを体感できた。

 他に私が体験した清掃奉仕活動として天理教の「回廊拭き」がある。毎年9月に、学生を連れて天理教本部を訪問し、神殿の回廊拭きをさせてもらっているのだ。両手・両膝に雑巾をつけ、四つん這いになって回廊を磨くのである。その際、回廊拭きをしていた20代半ばの男性信者のTシャツに「No Kairo, No Life」とプリントされていたことが強く印象に残っている。

 また、宗教法人格こそ持っていないものの、京都の山科にある一燈園の清掃活動も非常に有名である。修行の一環で、他人の家の呼び鈴を鳴らし、「山科の一燈園の者です。御宅のトイレ掃除をさせてください」とお願いする。ある者は200軒もの家を回ったが、すべて断わられ、夕方になり、ようやく掃除をさせてもらえる家を見つけた。その時に、嬉し涙をボロボロと流しながら、汚れた便器を磨いたという。掃除の後に「ありがとう」と出されたお茶を前にして、また涙する。

 やはり、掃除という行為が教団にとっては信者に反復的な身体実践をさせ、魂を磨かせる「行」としての機能を持っていることが見て取れよう。

※SAPIO2011年3月9日号

トピックス

田村瑠奈被告(右)と父の修被告
「ハイターで指紋は消せる?」田村瑠奈被告(30)の父が公判で語った「漂白剤の使い道」【ススキノ首切断事件裁判】
週刊ポスト
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
暴力団幹部たちが熱心に取り組む若見えの工夫 ネイルサロンに通い、にんにく注射も 「プラセンタ注射はみんな打ってる」
NEWSポストセブン
10月には10年ぶりとなるオリジナルアルバム『Precious Days』をリリースした竹内まりや
《結婚42周年》竹内まりや、夫・山下達郎とのあまりにも深い絆 「結婚は今世で12回目」夫婦の結びつきは“魂レベル”
女性セブン
騒動の発端となっているイギリス人女性(SNSより)
「父親と息子の両方と…」「タダで行為できます」で世界を騒がすイギリス人女性(25)の生い立ち 過激配信をサポートする元夫の存在
NEWSポストセブン
宇宙飛行士で京都大学大学院総合生存学館(思修館)特定教授の土井隆雄氏
《アポロ11号月面着陸から55年》宇宙飛行士・土井隆雄さんが語る、人類が再び月を目指す意義 「地球の外に活動領域を広げていくことは、人類の進歩にとって必然」
週刊ポスト
九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
初のフレンチコースの販売を開始した「ガスト」
《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン
希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
佐々木朗希のメジャーでの活躍は待ち遠しいが……(時事通信フォト)
【ロッテファンの怒りに球団が回答】佐々木朗希のポスティング発表翌日の“自動課金”物議を醸す「ファンクラブ継続更新締め切り」騒動にどう答えるか
NEWSポストセブン
越前谷真将(まさよし)容疑者(49)
《“顔面ヘビタトゥー男”がコンビニ強盗》「割と優しい」「穏やかな人」近隣住民が明かした容疑者の素顔、朝の挨拶は「おあようございあす」
NEWSポストセブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン