ライフ

浮気はいけない! こう言う男は浮気相手になれない冴えぬ男

 生物の行動を研究する動物行動学によれば、人間の性行動の多くは動物的本能による行動として説明できるという。その代表格が「不倫」である。以下、動物学行動学研究家の竹内久美子氏の話。

 * * *
 遺伝的に優れているということは、何もいい大学を出ているとか、よい会社に勤めているなどということとは全然関係ない。動物として遺伝的に優れているというのは、免疫力が高いこと。つまり、バクテリア、ウィルス、寄生虫などの寄生者(パラサイト)に強いということである。

 なぜ免疫力なのか、と不思議に思われるだろう。現代人はあまり意識しないかもしれないが、我々は本来、パラサイトだらけの世界に生きており、しかも、生物の二大テーマは生存と繁殖なのだ。生き残るためには免疫力が最大の問題だし、そのために、繁殖の場では免疫力の高い相手を探すのである。

 女が浮気でパートナーよりも遺伝的に優れた男を選ぶのも、この免疫力により優れた男を選んでいるにすぎない。浮気で子にヴァリエーションをつけるということも、この話の延長上にある。子が遺伝的に似たり寄ったりだと、ある伝染病が流行ったときはセーフだが、別の伝染病が流行ったときには全滅するかもしれない。けれど、子に遺伝的ヴァリエーションがついていれば、少なくとも全滅は免れるだろうからだ。

 しかし……その免疫力の高さをどうやって見抜くのだろう。一見至難の業と思えるこの問題だが、実はとても簡単なことだ。我々が魅力と感ずるもの。そのすべてがその手がかりとなっている。ルックスや声の良さ、スポーツや音楽の能力……。

 人間は夫婦やパートナーの関係がありながら、しょっちゅう別行動をとる。だからこそ浮気が介入してくるのだが、それはほ乳類では実は大変異例なことなのだ。 ほ乳類でもし夫婦の関係があるなら、その行動は24時間べったりいっしょだ。そうでないと、メスが他のオスにとられるか、交尾させられてしまうからだ。 

 我々に近いところでは、ゴリラが一夫多妻のハレム(ハーレム)をつくっている。一頭のリーダーオスが数頭のメスとその子どもたちを従えている。食べるときも寝るときもいっしょ。たまに若いオスがハレムを乗っ取ろうとして、あるいはメスを一頭スカウトしようとしてハレムのリーダーに戦いを挑んでくる。つまりゴリラがあのような大きな体躯を進化させたのはそうした戦いを通じてなのだ。 

 その点では鳥はとても人間に近い。鳥の九割は一夫一妻制をとっている。鳥には巣づくりと抱卵、子育てという過程があるが、これが曲ものだ。巣材の調達やエサさがしのために夫婦はしょっちゅう別行動をとる。その際、オスもメスも当然のごとく浮気をする。しかもオスはあらゆるチャンスをものにしようとするが、メスは亭主よりいい“男”としか交尾しない(原則通りだ)。こういう過程を経て鳥は(主にオスの方だが)より美しく、より歌がうまいといった魅力を進化させてきたのだ。実際、浮気がよく横行している種ほどオスがメスに比べ、より美しいということがわかっている。

 浮気はいけない、という「倫理」は、女に浮気相手としてもらえない、さえない男たちのプロパガンダだというのが私の持論である。

※週刊ポスト2011年3月11日号

関連記事

トピックス

長男・泰介君の誕生日祝い
妻と子供3人を失った警察官・大間圭介さん「『純烈』さんに憧れて…」始めたギター弾き語り「後悔のないように生きたい」考え始めた家族の三回忌【能登半島地震から2年】
NEWSポストセブン
古谷敏氏(左)と藤岡弘、氏による二大ヒーロー夢の初対談
【二大ヒーロー夢の初対談】60周年ウルトラマン&55周年仮面ライダー、古谷敏と藤岡弘、が明かす秘話 「それぞれの生みの親が僕たちへ語りかけてくれた言葉が、ここまで導いてくれた」
週刊ポスト
小林ひとみ
結婚したのは“事務所の社長”…元セクシー女優・小林ひとみ(62)が直面した“2児の子育て”と“実際の収入”「背に腹は代えられない」仕事と育児を両立した“怒涛の日々” 
NEWSポストセブン
松田聖子のものまねタレント・Seiko
《ステージ4の大腸がん公表》松田聖子のものまねタレント・Seikoが語った「“余命3か月”を過ぎた現在」…「子供がいたらどんなに良かっただろう」と語る“真意”
NEWSポストセブン
今年5月に芸能界を引退した西内まりや
《西内まりやの意外な現在…》芸能界引退に姉の裁判は「関係なかったのに」と惜しむ声 全SNS削除も、年内に目撃されていた「ファッションイベントでの姿」
NEWSポストセブン
(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(AFP=時事)
《大胆オフショルの金髪美女が小瓶に唾液をたらり…》世界的お騒がせインフルエンサー(26)が来日する可能性は? ついに編み出した“遠隔ファンサ”の手法
NEWSポストセブン
日本各地に残る性器を祀る祭りを巡っている
《セクハラや研究能力の限界を感じたことも…》“性器崇拝” の“奇祭”を60回以上巡った女性研究者が「沼」に再び引きずり込まれるまで
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン