健康ランドからかかってきた午前3時の110番通報。その声は切羽詰まっていた。
「もう限界だ。何か食べたいから、逮捕してほしい」
警察官が駆けつけると、生気のない顔をしたおじさんが「通報したのは私です」と名乗り出て、その場で逮捕された。男は60才。容疑は詐欺(無銭宿泊)だった。
警察の調べによると、この男は昨年12月22日から今年2月14日までの55日間、栃木・足利市にある健康ランドに滞在。無銭宿泊を続け、施設利用料金11万6150円相当を支払わなかった。
「24時間営業だったこともあって、容疑者はスタッフの誰にも気付かれないまま、一度も外に出ることなく施設内で暮らしていました」(捜査関係者)
この健康ランドは、大浴場や露天風呂、サウナ以外にもレジャー施設が充実。入館料さえ払えば、ほとんど無料で使用できる。そういったこともあって、男はここを“滞在先”に決めたようだ。
「お風呂やサウナにのんびりはいった後は、雑誌やコミックが漫画喫茶のように揃えてあるレストルームでごろごろしたり、数年前のヒット映画を上映するシアタールームを利用していたようです。そして、夜は仮眠室でぐっすり眠るという“贅沢”な生活を送っていたとか。逮捕後に本人も“ヒマがつぶせて、飽きない”といっていました」(捜査関係者)
遊ぶには事欠かなかった男だが、食生活はとても厳しいものだった。館内の食事は、本来なら退館時の精算だが、滞在期間が長すぎて怪しまれると思ったらしく、現金精算していたという。入館当初こそ、焼きそばや焼きおにぎりを買っていたが、すぐに所持金を使い果たし、何十日間も無料のお茶と冷水だけで過ごしていた。逮捕時の所持金は33円のみだった。
※女性セブン2011年3月10日号