20代から30代に向けて、自らの体験を交え、幸せに働くためのエッセンスをまとめた著書『働く君に贈る25の言葉』(WAVE出版刊)が20万部のベストセラーとなっている、元東レ経営研究所社長の佐々木常夫氏(現・特別顧問)。氏が、学生に向けて就職活動を幸せに乗り越えるための言葉を贈る。
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「やり尽くしたが、自分の不本意な結果になった」――でもそれが人生です。例えば内定をもらった会社が、それほど希望するところじゃないかもしれない。でも私は、その運命を引き受けた方がいいと思うのです。賽は投げられたのです。
私は東レという会社に入りましたが、理由は「先輩が強く勧めたから」というだけ(笑)。どの会社も働いてみなければわからない、と思っていました。だから、極端な話、会社はどこでも良かった。就職してからも、希望部署を出さなかったくらいですから。実際、会社なんて、どこも似たようなものですよ。社長までやった私が言うんですから間違いありません(笑)。
人生は、思い通りにいかないからこそ、君自身が成長するチャンスなんです。私も、そうでした。
私の長男は自閉症です。妻は私が40歳の時に肝臓病になり、その後うつ病を併発しました。3度におよぶ妻の自殺未遂の時は、自暴自棄にもなりかけました。でもこれが運命です。家族と仕事を両立するために、私は効率的な仕事術を身につけました。人生を見つめ直す契機にもなりました。人生のピンチを、自分を磨くことに利用したのです。
就職活動も、その後の会社生活も、それと同じです。つらいことでも、嫌なことでも受け容れて、それを自分磨きの糧にしてしまう。
実際、成功した人は皆そうなのです。例えば、元経団連会長の奥田碩さん。トヨタの改革者としても知られますが、氏はかつてフィリピンに飛ばされていました。
東レのライバル会社帝人の社長を務めた安居祥策さん(現・日本政策金融公庫総裁)もそう。帝人にいた半分近くを関連会社に出向させられていました。でも彼らは、諦めなかった。人生を受け容れて、自分を磨いたからこそ、社長にまで上り詰め、さらに結果を出したんです。
運命を引き受けることは、諦めることとは違います。運命を楽しむのです。だってそうでしょ? 君の人生の主役は、君しかいないのですから。
※SAPIO2011年3月9日号