東京の多摩地域では地方選レベルの新たな宗教戦争ともいえる競合が起きている。国政選挙では創価学会、幸福の科学、新宗連(立正佼成会、PL教団などが加盟する新宗教団体の連絡組織)の三つ巴の戦いだったが、地方選には新たなプレーヤーが登場してきたのだ。
ジャーナリストの竹中英二氏がレポートする。
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東京・立川市には新興宗教の中でも急成長している真如苑の本部や研修施設があり、JR立川駅前には週末になると本部道場「応現院」に向かう信者の列ができる。
同教団は2002年に立川市と隣接する武蔵村山市にまたがる広大な日産工場跡地(約106万平方メートル。東京ドーム22個分)を739億円で買収し、新たな寺院建設を計画。現在、市や地元との協議を進めるなど、「宗教都市化」を進めている。
政界進出にも積極的な動きを見せた。
真如苑はこれまで地方選では信者の自民党議員を支援してきたことで知られるが、昨年6月の立川市議選では無所属の独自候補を擁立してトップ当選させ、新会派を結成したのである。「日産跡地開発などのプロジェクトを抱え、市政への影響力を強めるため」(地元議員)との見方が強い。
そうした真如苑の動きに警戒を強めているのが創価学会だ。同じ多摩地区の八王子市は創価大学、富士美術館など創価学会の施設が集中する一大拠点で、立川市も公明党が市議会の第一党を占めている学会の地盤が強い地域である。立川の市議選は終わったものの、統一地方選では八王子市をはじめ他の多摩地域の市町村議選が行なわれる。
東京で長く選挙の第一線に立ってきた古参学会員は、「真如苑は内部に政治部門を持ち、立川だけでなく昭島市、武蔵村山市など周辺の地域でも政治的影響力を強めようとしている」と語る。
統一地方選「完全勝利」を続ける創価学会だが、実はそのお膝元周辺からぐらつき始める可能性もある。
※SAPIO2011年3月9日号