「醤油の色は黒い」とは、誰もが疑わない“常識”だろう。だが、その“常識”に危機感を抱いた、ヤマサ醤油の開発者が、画期的な容器を開発。その容器を採用した『鮮度の一滴』は発売後わずか半年で100万本を売り上げる大ヒットを記録している。「『醤油=黒』に危機感」とはいったいどういうことなのか?
『鮮度の一滴』の開発を手がけたマーケティング部家庭用MD推進室長・藤村功氏は、こう問いかけてきた。
「できたての美味しい醤油の色は何色だと思いますか?」
「黒です」
と記者は即答したが、藤村氏は笑顔で、こう返した。
「作りたてのフレッシュな醤油は実は赤いんですよ」
そういいながら、藤村氏が目の前に、2種類の醤油を入れた紙コップを差し出した。ひとつは記者が自宅でよく目にする黒い醤油。そしてもう一方は赤みがかった醤油。赤い醤油は香り高いが、黒い醤油は酸っぱい香りがした。実はこの2つの醤油は、約2か月前、同時に開封された同じ種類の醤油。異なるのは容器だ。黒い醤油は従来のペットボトル。赤い醤油は『鮮度の一滴』。こちらは特殊な容器を採用し、開封後も70日間、鮮度を保つことができるのだ。
「一般の人には“醤油=黒”が常識でしょう。しかし、我々醤油メーカーの社員にとっては“醤油=赤”なのです」
醤油は空気に触れると酸化し、本来の赤色から徐々に黒く変色する特性があるという。
※週刊ポスト2011年3月11日号