今年も中学受験シーズンが幕を閉じた。だが、これまで子供の「中学受験」にすべてを賭けてきた母親たちにある異変が起きているようだ。
『偏差値30からの中学受験合格記』の著者で、中学受験に挑む母親たちから悩み相談を受けている鳥居りんこさんがいう。
「どんなに頑張って勉強しても、第一志望校に合格できるのは3~5人に1人。万歳という結果にならない家庭のほうが多い。受験にすべてをかけてきただけに、志望校に不合格になったときの母親のショックは、子供以上に大きい。10年引きずり続けている人もたくさんいますし、立ち直るまでには長い時間がかかります」
心理学者で教育問題に詳しい矢幡洋さんもこういう。
「この年齢の子供は中学受験がどう将来につながるかということを、いまひとつ理解しきれていません。一方、母親は有名中学に合格することこそ、子供の夢や未来を開く一歩になると思い込んでいる。子供は不合格になったそのこと以上に、親の期待に沿えなかったという悲しさやショックを覚えるものですが、親がきちんと励ましさえすれば、立ち直りも早い。しかし、母親のほうが大きなダメージを受けてしまうことも少なくないのです」
それほどまでに母親のダメージが大きいのは、「中学受験は親で決まる」と聞かされ、子供以上に受験にのめりこんでしまうからに他ならない。
「長い人は5~6年もの間にわたって全精力を受験に傾けます。情報収集、高額な塾代の捻出、教材の選択、塾への送迎、弁当作り、子供へのはっぱかけと、すべてをかけて奔走する。ところが受験が終わると、それまでの忙しさから急に解放される。目的を喪失し、心にポッカリ大きな穴が開いた状態になってしまうんです」(教育評論家・親野智可等さん)
その結果、“燃え尽き症候群”に陥ってしまう母親も少なくないという。前出・矢幡さんの話。
「受験が終わった後、何をやってもはからどらない、力がはいらない。受験に失敗したことで自分や子供を責めてしまい、葛藤に陥る。こうした症状は“燃え尽き症候群”によるものです。これらがさらに進行し、軽いうつや“うつ状態”になってしまうケースもあるんです」
昨年、娘が受験に失敗したBさん(45・主婦)は、いまも精神科に通院する日々が続いている。
「娘が不合格だったのは私の教育の仕方が悪かったんじゃないかとか、いろいろ考えてしまい、ノイローゼ状態になってしまいました。眠ることができないので、精神科でもらう睡眠薬が手放せないんです」(Bさん)
※女性セブン2011年3月17日号