勢力を伸ばしてきた新教団の特徴に教祖のカリスマ化が挙げられると宗教学者の島田裕巳氏は指摘する。現在進行形でカリスマ化が進んでいるのが、幸福の科学の大川隆法総裁だ。
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大川氏は1956年に徳島県で生まれ、東京大学法学部を卒業後、商社のトーメン(現在の豊田通商)に入社。
24歳の頃、「イイシラセ、イイシラセ」と、〈福音〉を告げる自動書記(手がひとりでに動いて文字を書くこと)がはじまったとされ、霊界との交流をはじめ、自らを「エル・カンターレ」(幸福の科学の本尊)と自覚したという。
同教団も「幸福の科学学園」を設立したり、信者向けの月刊の小冊子を出してその中で“大川氏を信じることの素晴らしさ”を説くなど創価学会と似たようなカリスマ化のシステムを持っているが、特徴的なのは、600点を超える大川氏の著作である。
一般人には信じがたいが、歴史上の人物の霊や存命中の人間の守護霊が大川氏に“降臨”して喋るとされる「霊言」による著作が、特に一昨年から数多く出版されている。
その出版ペースは早く、多い月には12冊も刊行され、ついに年間の書籍発行点数52冊(2009年11月23日~2010年11月10日)はギネス記録として認定されたという。大川氏の著作は一部書店で100冊単位のまとめ買いもあって常にベストセラーに入っているが、信者は年中それを読むことによって、大川氏に敬慕の念を抱き続けることになる。
大川氏は1980年代も霊言本を出版していたが、最近は宗教的なものよりも、ドラッカーや坂本龍馬などその時々の流行を取り入れ、政治・経済・社会・国際問題などを扱う内容が多くなっている。これらの著作は、信者にとっては「総裁の著書を読めば社会情勢がわかる」という知識伝達の手段になっていると言えよう。読んで具体的に役に立ついわば「教養宗教」の性格が色濃いものである。
※SAPIO2011年3月9日号