日本料理と西洋の家庭料理を手ほどきした『辰巳芳子 スープの手ほどき 和の部』『洋の部』(各1200円、ともに文藝春秋)を出版した料理研究家の辰巳芳子さん(86)は、家庭料理の第一人者だ。辰巳さんは70才のとき、NPO法人「良い食材を伝える会」を立ち上げた。日本人の食に心を痛めることが多くなったからだ。
昨年、辰巳さんは自治体の食生活調査を行った。20代から60代までの全国の男女を対象に、「この1週間で食べたもの」「食べたいもの」「食べなければならないもの」を書き出してもらった。
「その結果を見たとき、愕然としました。20~30代の男女は、朝食を食べないか、食べても菓子パンや中華まん、ペットボトルの飲み物、夕食がラーメン。食べたいものはぎょうざとかピザばかりで、五目ずしとか和食のおいしいものが、ほとんど出てこないんだもの。それに、食べたいものもわからない人が多かったんです。想像力が貧困としかいいようがありません」(辰巳さん)
酒の肴が出てこなかったことにも驚いたという。「たらこや、たらの白子のような魚卵類、このわた、うになど日本の酒の肴は、男性ホルモンを補うものが自然に多いのです」。これからの季節、おいしさを増す野菜に三つ葉がある。
「三つ葉には神経を鎮める作用があるんですよ。男性は外に出れば、七人の敵と戦わなければならない、といったものです。三つ葉のおひたしや卵とじなど、ほかの家族よりも一品でもいいので多いめに作って差し上げて、仕事の疲れを労ってあげてください」
よそでは教えてくれない、こんな話題を交えながら、手ほどきしてくれる辰巳さんだから、主宰するスープ教室「スープの会」は常に満員。入会は数年待ちだという。
※女性セブン2011年3月17日号