国内

ネットの拡大で国民はメディアの小沢、橋下、河村批判に疑念

 大阪府の橋下徹知事や名古屋市の河村たかし市長らによる「地方の乱」が注目を集めているが、権力構造に対する反乱はこれまでも起きた。しかし、ことごとく鎮圧された。権力側の“秘密警察”の役目を果たしてきた新聞・テレビの攻撃を受けたからである。

 過去の代表的な反乱といえば、「脱ダム宣言」で長野県知事に当選(2000年)した田中康夫・新党日本代表だろう。長野ではそれまで約40年間も県庁職員出身の知事が続き、公共事業頼みの政策が続いてきた。

 田中氏は就任すると公共事業費と公務員人件費の削減で一気に県財政を立て直す手腕を見せたが、「脱記者クラブ」を宣言して知事会見を開放すると、地元紙や大手メディアは掌を返して激しい批判を浴びせた。朝日新聞は、田中知事が亀井静香氏と新党結成に向けて会談したなどとする捏造記事まで掲載してイメージダウンをはかった。

 メディアを敵に回してからは、世論調査の支持率もガクンと下がり、3選を目指した06年の知事選で「反・脱ダム」を掲げた元自民党代議士に敗れたのである。

 石原慎太郎・都知事も就任直後は知事主催の記者会見をワイドショーや雑誌メディアに開放したことで記者クラブと対立、バッシングを浴びた。その後、知事主催会見を撤回しクラブ主催会見に一本化することで妥協すると、メディアの批判はやんで3期12年の任期を全うできた。

 そして、この20年あまり、メディアの最大の標的とされてきたのが小沢一郎・民主党元代表であることは間違いない。自民党幹事長時代は「剛腕」と党運営を批判され、細川連立政権を樹立すると「二重権力」批判、新進党解党で「壊し屋」と、異名には事欠かない。

 民主党代表として首相の座が近づくや、西松建設事件捜査が始まって代表を追われ、政権を取って幹事長に返り咲くと陸山会事件での強制捜査と検察・メディア一体のキャンペーンで失脚した。法廷では、検察が西松事件の立証を放棄し、強制起訴を担当した指定弁護士も、その起訴の証拠となったはずの“水谷裏献金”を立証しないというメチャクチャな裁判が続いているが、大メディアの報道は、まるで日々、小沢氏の“巨悪”が証明されているような論調だ。

 それだけ小沢氏は、既成の権力構造の側から危険視されてきたのだろう。しかし、状況は大きく変わってきた。

 橋下氏が2月6日のブログで指摘したように、ネットの拡大によって、国民は既成メディアに疑念を抱き始めている。

 橋下氏はこう書いた「情報提供能力に関しては既存のメディアよりもネットの方が優れてきた。発信者側がネットを利用してきたからね。ところがそうなると、権力チェックをするものがなくなって来るんだ。これは危険。権力チェックは、これでは収益が上がらない。いわば社会奉仕活動。既存のメディアは情報提供で収益を上げて、権力チェックという社会奉仕活動を行う」
 
 かつては「反乱軍」の言葉など大メディアが封殺すれば国民に届かなかったが、今では新聞・テレビが報じない事実を直接、国民に発信できる武器がある。大メディアが、小沢氏や橋下氏がネットでの発信を続けることを批判する動機は実にわかりやすい。

 橋下知事や河村市長があれだけ大メディアに批判されながら、依然、高い支持率を保っていることは、有権者が新聞・テレビの報道を鵜呑みにしなくなってきたことの現われと見るべきだ。だから今起きている「地方の乱」は日本の権力構造をリセットする大きな可能性を秘めている

※週刊ポスト2011年3月18日号

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