少子化が進む一方で、受験者数は“高止まり”の状態が続いているという中学受験。どんなに勉強しても、第一志望に合格できるのは3~5人に1人といわれている。
中学受験――恐らく、子供たちがその人生の中で初めて体験する大きな壁。不合格になってしまった子供とその親が、ショックを引きずる例も少なくないという。しかし、重要なのは、子供たちにとって中学受験など、その後に続く長い人生のほんのひとコマに過ぎないという事実だ。
Gくん(19)は現在、早稲田大学の1年生だが、中学受験に失敗した経験を持つ。
「第一志望をはじめ、すべり止めで受けた学校まですべて落ちました。でも、その後、母が受験終了パーティーを開いてくれました。父も早く帰ってきてくれて、みんなでケーキを食べたんです。ぼくは悔しくて自分の部屋で泣きましたが、家族が一緒になって落ち込まず、支えてくれて良かったと思います」(Gくん)
今年、長女が高校を卒業するHさん(51)は、長女が中学受験で失敗したときの経験についてこう語った。
「親が熱くなればなるほど、娘は勉強に身がはいらなくなり、成績は落ちていった。そんなとき、思い詰めた娘から『私ができない子でごめんなさい』という手紙をもらい、私ひとりが空回りしていることに気づかされました。それからは娘ができるペースで勉強させ、結局、志望校には落ちました。でも娘といい関係を築けたことは合格以上の収穫だったと思います」
娘はいま18才。パティシエを目指して4月から料理の専門学校に通うという。教育評論家の親野智可等さんはこう話す。
「不合格を乗り越えた例に共通するのは、親の切り替えが早かったこと。受験は、たとえ失敗しても、その過程で大変な努力をしてきているので、確実に学力はついている。ですから、努力や学力がアップしたことをほめてやることが大切です。それが自信につながれば、子供たちは今後も勉強に対して前向きな気持ちを持ち続けられます」
無論、中学や高校で良い成績をとって有名大学を目指すことだけが人生ではない。
「子供が自信をもって将来の夢を持てるようにしてあげること、親の役割とはそれに尽きるのではないでしょうか」(親野さん)
合格しようがしまいが、そもそも中学受験をしようとしまいと、すべての12才の春は、未来に向かって続いている。
※女性セブン2011年3月17日号