現代はまさに昇進とリストラが紙一重の時代。後ろ指さされることなく仕事人生を充実させ家族の生活を守る―そんな「幸福な出世」の法則について検証してみた。
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出世街道のゴールである社長の椅子に座れるのはごく一握りの社員のみ。ただでさえ難しいそのポストに、並いる先輩を飛び越して就任する、いわゆる「○人抜き」の社長は日本広しといえどもそう多くはない。
1999年、バブル期の財テク失敗によって会社の屋台骨が揺らいでいた日商岩井(2004年にニチメンと合併して現在は双日)の社長に就任した安武史郎氏(現アステラス製薬社外取締役)は、当時57歳。17人抜きの緊急登板だった。
【人の陰口は「聞かない」】
「当時は常務取締役で7人いる経営会議のメンバーになったばかりでした。取締役が28人いて、就任した年次は18番目だったんです。前任社長から指名を受けたときは、いったんは辞退したんです」(安武氏)
大抜擢は偶然ではない。
「客観的に見て、私が人よりも優れた点があるとすれば、社内に敵がおらず、人から恨まれるようなことはしなかったこと。人の陰口は一切聞かない、人の足を引っ張らない、ウソをつかない――この3点をモットーに仕事をしてきたつもりです」
※週刊ポスト2011年3月18日号