国際マーケットでの食糧価格の上昇を受け、日本でもコーヒーや砂糖などの値上げが始まっている。が、デフレの中で、「世界的な食糧高騰が家計を圧迫している」と感じることは、ほとんどないのではないか。これは、“円高の恩恵”だ。しかし、ひとたび円安に転じると、食卓にも大きな影響が及ぶことになる。シミュレーションした。
2011年3月の時点で、1ドル=約82円。わずか1年前には94円、2年前には100円だった。では、もし1ドル=100円の水準まで円安に転じたら、我々の食卓はどうなるのか。原料となる食糧品ごとに、試算した。
まず、現代人にとって、コメとともに重要な主食となっている小麦商品である。
スーパーなどで売られる1斤170円前後の食パン。業界関係者によれば、パンの原価は30~40%ほどだという。間をとって35%だとすれば、59.5円。原料中の小麦の比率はざっと7割なので、小麦にかかる値段は約41円となる。
新生証券シニアアナリストの松本康宏氏が分析する。
「現在、1ドル=82円で輸入できている小麦が、1ドル=100円となれば、22%ほど原料価格が高くなる計算です。
パン1斤では、原料が9円分コストアップとなる。それが商品価格に反映されるとすると、170円のパンが179円になる。約5.3%の値上げです」
最近ではプライベートブランド(PB)の食パンが、1斤100円で売られている。
日本パン工業会によれば、「高い食パンはバターなど小麦以外のものを入れるので小麦使用比率は低くなりますが、100円のPB食パンではむしろ小麦使用比率が高くなる。輸入小麦価格が上がると、安いパンのほうが影響が大きくなります」 という。170円の食パンと同様に計算すると、100円食パンの値上げ幅は9%にのぼる。
うどんやラーメンはどうか。
大手食品メーカーによれば、スーパーで3玉300円ほどで売られているうどん(生麺)の原価は約20%(60円)。
「うどんは水の占める割合が多く、小麦は原料の5割」(メーカー関係者)だというから、小麦の原材料費は3玉で30円となる。これが1ドル=100円になると、7円のコストアップとなり、商品価格(300円)から見ると、2.3%の値上げになる。
ラーメンはそれに比べて小麦比率が高く、うどんの1.5倍ほどだという。同じく円安になると、商品値上げ率は3.3%。3玉300円の商品が310円ほどになる。
ちなみに、外食でラーメンやうどんを食べる場合、代金のうち人件費や店の家賃、水道光熱費が占める割合が高く、逆に小麦の原料価格の割合が低くなるため、あまり影響はないと考えられる。
※SAPIO2011年3月30日号