3月5日から中国では日本の国会にあたる全国人民代表大会が開かれ5か年計画が策定された。国防予算も同時に審議されたが、中国の軍事費は不透明といわれている。その内幕をチャイナウォッチャーのウィリー・ラム氏が解説する。
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群衆を解散させようとする大量の警官と、デモの呼びかけに集まった人々が睨み合う。中には警官に食ってかかり、拘束される人間も。
3月5日からの全国人民代表大会(全人代)を前に、北京は緊迫した空気に包まれた。チュニジアのジャスミン革命に倣って、中国でも民主化要求デモを繰り広げようとした活動家や市民と、当局との攻防が続いている。
こうした緊張の中で開かれる今回の全人代の最重要議題は、今年から始まる中期経済計画の第12次5か年計画(2011~15年)だが、この審議に合わせて、軍事関係の中期計画である国防5か年計画も策定されていることはほとんど知られていない。
中国の国防費は、2009年まで21年連続で前年比2ケタ増だったが、2010年は7.5%増と1ケタ増にとどまった。北京の軍事筋によると、共産党指導部は今後5年間の国防予算の平均増加率を昨年並みの7.5%程度に抑える見通しだ。
「しかし、これによって軍関係の予算の伸びが減少するということにはならない。なぜならば、軍関係の予算はあらかじめ『国防予算』以外の国家予算にも組み込まれているからだ」と同筋は語る。
欧米の中国軍事専門家は「発表される中国の国防予算は軍関係全体の3分の1から5分の1程度」と指摘してきた。2010年の国防予算は約5300億元(約6兆7000億円)と発表されていたが、実際の軍事関係予算は約20兆円から40兆円の間となる。
地方の兵員の給料や設備費を地方政府が払ったり、兵器開発について政府の研究機関が費用を負担するなど、「国防予算には表面上、表われてこない無数の支出が存在する」と同筋は明らかにする。
※SAPIO2011年3月30日号