エジプト・カイロでの民主化デモを取材していた日本人写真家、Q.サカマキ氏は、その最中、軍刑務所に3日間拘束された。サカマキ氏が身をもって体験した革命の背景を解説する。
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巨大な民主化の波を生み出した大きな要因は幾つかある。
まず、「ムバラク政権の圧政」だ。取材した大半の人間がトップに理由をもってきていた。彼らは、さらに圧政について分類し、その中でもっとも多かったものは、日常の安全性だった。ポリスに嫌われれば、要求された賄賂を断われば、理由などなく多くの者が逮捕され、拷問されていた。
また、賄賂に加えて、縁故主義もはびこり、それらがなければまともな仕事を得ることができなかった。こうした悪政が、階級社会を生み出し、実質20%以上とも言われる失業率、あるいは、国民の40%が1日2ドル以下の収入、という状況を生み出していたのだった。
「殉教者シンドローム」の要因もある。圧政に対し、それを変えることを大義とし、その大義が自分だけでなく、大きなグループや民族的域に達するとき、死さえいとわずに達成しようとするものだ。もともとイスラム/アラブ文化にはこの価値観はより多く存在し、それが今回爆発したものだった。
「フェイスブック」という時代の申し子もうまくかみ合った。このテクノロジーの進歩がなければ、いかに圧政が中東全域に広がっていようと、殉教者シンドロームが存在しようと、カダフィーの息子が比喩したように、短期間でこれほどの巨大なムーブメントにはならなかったはずだ。事実、そのため、過去何十年と中東の圧政者たちは自らの権力を保ち続けることができた。
※SAPIO2011年3月30日号