草食系などと批判されることの多い最近の若者たち。だが、『下流社会』の著者であり、近著に『愛国消費』もあるカルチャースタディーズ研究所代表の三浦展氏は、彼らこそが国の将来を救う可能性があると指摘する。
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近年の若者たちはよく「内向き」だと批判される。たしかに彼らは草食系と言われパワーも弱い。しかし私は、日本を好み、日本文化を愛する世代が台頭していることは、実は日本の将来を救う可能性にもつながると考えている。
これからはソフトパワーの時代である。工場が海外に移転し、モノづくりでは雇用は生まれない。これから新たな雇用を生むとすれば、知的産業である。知的産業のひとつの重要な核となる要素は、まさに文化なのだ。
また、若者たちが「保守化」しているのはたしかだが、彼らの保守化は政治的なものではない。彼らが好きで、誇りに思う「日本」は、あくまでも「平和で、美しく、豊かな生活ができる日本」である。
言い換えれば、彼らの「愛国心」は軍事や経済に支えられたハードなナショナリズムではなく、新しい、ソフトパワーに支えられたナショナリズムである。
さらに言えば、貧しい国家が近代化を推進する時代に必要とするナショナリズムではなく、豊かな国家が近代化を相当程度完了した時代に生まれる、文化的なナショナリズムなのである。
※SAPIO2011年3月30日号