いまだ解決の気配を見せぬ大相撲の八百長騒動だが、過去に週刊ポスト誌では八百長について何度も報じてきた。八百長報道を続けていくうちに、告白者の口から、八百長の見分け方を教えてもらうこととなる。
ひとつ重要なのが、力士の得意技。これによっても、八百長相撲の展開は変わってくる。
「押し相撲と四つ相撲で注射をすると、勝つ方の得意なパターンに引きずり込むので、見ているだけで八百長かどうか判別するのは難しい。しかし、押し相撲同士だと立ち合いで変化するか、はたき込むか、突っ張ってから突き出すしかなく、勝ちパターンが単純なのですぐにバレる」(元・大鳴戸親方)
「はたき込み」の判別法について、ある古参力士は「一度当たったあと、突き放してはたき込むパターンは八百長が多い」と語った。
「四つ相撲同士の場合は、得意の差し手がお互いに同じ『相四つ』か、逆の『喧嘩四つ』かで展開が違う。相四つならお互いに得意の組み手になるのでガチンコのふりをしやすいが、喧嘩四つで負ける側が得意な組み手になると大変。わざわざ腕を抜いてもろ差しを許してやったり、組み手を変えたりする。ガチンコなら得意の差し手で持ったまわしは死んでも放さないものです」(元・大鳴戸親方)
注射(八百長)力士はガチンコと見せかけるために四苦八苦するが、どこかにほころびが出てくるものだ。
また、八百長をする理由はケガをしないためでもあり、それも判別法になる。かつて中盆(八百長の仲介役)をしていた板井はこう語っていた。
「大きな力士は土俵から落ちてケガをしたくないので、土俵上でゴロンと転がるパターンが多い。八百長で大きな力士に勝つ場合、“思い切って踏み込んでほしい”とだけ打ち合わせる。それを受け止めて、いなすと土俵上で転んでくれる。負ける場合は“オレが突っ張っていくから”といっておくと、捕まえて土俵を割らせてくれる」
現役時代に八百長の常連だったある若手親方も、「土俵中央に向かって投げる一番は八百長の典型的なケース」と指摘する。
では、土俵際で中央に向かって投げを打てない場合はどうするか。
「土俵の外にそっと出す『寄り切り』は疑うべき。本当に勝ちたいと思うと、相手に体を預け、まわしをひきつけるし、相手も何とか残ろうとして粘るので、もつれて土俵下に落ちるのが自然な流れ」(付け人)
※週刊ポスト2011年3月18日号