食糧価格の上昇を受け、日本でもコーヒーや砂糖などの値上げが始まっている。が、円高のためか、デフレの中でも、食糧高騰が家計を圧迫していると感じることは、ほとんどないのではないか。
では、1ドル=100円になったら食卓にどんな影響が及ぶのかシミュレーションした。日本人の食卓に欠かせない醤油、味噌、豆腐はすべて大豆製品だ。全国味噌工業協同組合連合会によると、
「味噌の年間生産量は約45万t。そして、味噌製造に使われる大豆は約12万5000t。一部は国産が使われていますが、11万2000tが輸入大豆です」
という。つまり味噌の4分の1が輸入大豆。味噌1キロは、ざっと250gの輸入大豆からできていることになる。
新生証券シニアアナリストの松本康宏氏はこう語る。
「1キロの味噌は600円ほどで売られていますが、250g分の輸入大豆原料代は30円程度と安く、円安になったとしても、値上げ幅は1%弱の5円ほどにとどまるでしょう」
醤油は、「1リットル作るのに、200gの大豆が必要」(しょうゆ情報センター)。ざっと9割が輸入だという。しかし計算すると、これも円安による値上げ幅は1リットル500円の醤油の場合で3円、0.6%ほどとなる。
松本氏が語る。
「醤油や味噌のような、生産時のコストが高い商品は、円安になっても原料高による値上げ幅は小さくて済みます。ただし、円安によって原油価格が上昇すると、生産過程における燃料代の高騰につながることから、数%レベルで値上げされる可能性は否定できません」
豆腐は1丁100円のうち、大豆原料代は約12円。1ドル=100円となればこれが2円コストアップとなり、豆腐は102円と2%高くなる計算だ。 「値上げ率は数%から、高くても10%ぐらいか」と侮ってはいけない。
2010年の総務省統計局の家計調査では、1か月当たりの平均食費は、2人以上の世帯で6万3031円。平均5%の値上げとして月に3150円、10%の値上げなら6300円の食費増加となる。
そして今回のシミュレーションは、あくまで現在の穀物価格をもとに試算したものであることを忘れないでいただきたい。今後、円安に加えて穀物価格そのものが上昇すれば、ダブルパンチにより、さらに食卓への打撃は大きくなるのだ。
※SAPIO2011年3月30日号