最近の若者は日本が「好き」と答える傾向が強くなっている。この背景について、『下流社会』の著者であり、近著に『愛国消費』もあるカルチャースタディーズ研究所代表の三浦展氏が解説する。
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若者たちの「日本志向」が高まったのは、1990年代からと見られる。理由は大きく3つが考えられる。
1番目は、彼らが海外を知っていることにある。海外旅行に行かなくなったと言っても、バブル期の直前を下回っているわけではない。そして一度でも海外に行けば、日本の和食のおいしさや治安のよさ、日本人の「礼儀正しさ」などをいやでも再確認することになる。
2番目は、若い世代は米ソ冷戦構造が崩壊した後の数多くの民族紛争や内戦を見ていることだ。スーダンの内戦や今回のエジプトやチュニジアなどの混乱を見て、「やっぱり日本は平和でいい」と思うのは当然だろう。
3番目はスポーツや文化面での日本人の活躍である。サッカーは93年にJリーグが始まり、1998年にフランスW杯に出場を果たした。以来、日本代表の試合のたびに、大きなニッポンコールが巻き起こるようになった。五輪はかつては大会期間中の2週間だけ盛り上がっていたが、今では五輪が終わるとすぐに「次のW杯」そして「次の五輪」の話題になる。常に日本を応援できる状態が継続している。
また1995年の野茂英雄投手を皮切りに、多くの日本人選手が大リーグに挑戦し、サッカー選手の海外進出も急増していることが挙げられる。日本人が所属する海外チームに興味がなくても、「日本人」は応援できるものだ。
さらには日本のアニメや漫画は世界で高い評価を受けているし、映画なら北野武、野球ならイチローというように、“個人”が評価されるようになっている。クラシックの音楽コンクールで日本人が何人も優勝し、料理の世界でも日本人のシェフやパティシエがコンクールで活躍している。
かつては日本製品が海外を席巻しても、日本はバッシングの対象にされた。いくら車や電気製品が売れても、そこに日本人の顔は見えなかった。しかし今では日本人の“顔が見える活躍”を通じて、若者たちは日本を誇りに思うようになっているのである。
※SAPIO2011年3月30日号