週刊ポスト本誌で2週にわたって八百長や退職金未払い問題を告発してきた大関・日馬富士の元付け人・雷鳳(23)。毎日新聞が(特別調査委員会は)〈八百長にかかわった疑いが極めて高いと判断している〉として名前を挙げた安壮富士の八百長相撲を告発する――。
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十両の星の売買は、20万~40万円ぐらいが相場です。十両の収入はそれほど多くはないので、力士のなかには、星を買うために借金する者までいます。
ボクが部屋にいた頃、安壮富士は自分名義ではなく、付け人に借金させて星を買っていました。
安壮富士が2005年に3度目の十両昇進を果たし、その後3年ほど十両に定着した頃の話です。安壮富士の付け人が、どうも借金の取り立てを受けている様子だった。そんなに遊んでいるわけでもないのでおかしいと思って問い詰めたら、安壮富士に頼まれて、錦糸町の場外馬券売り場近くにあるサラ金で4~5件にわけて借りていたことを白状しました。
この付け人は安壮富士が注射(八百長相撲)するためのカネを借りており、「借金は全部で200万円ぐらい」といっていた。安壮富士は奥さんが厳しい方だから、自分では借りられなかったようです。
「だから、安壮富士はオレには逆らえないんだよ」と呟いていたのを覚えています。
でも当時、彼は序二段で、毎月4万~5万円しか収入がなかった。自分では200万円なんて到底返済できません。なぜ審査を通ったのでしょうかね。
では、その借金をどうやって返済するかというと、星を買って幕下落ちを防いだら、次の場所では今度は星を売って返済するわけです。でも、いつもうまく回るとは限らない。そうなると頭を抱えるのは付け人で、「またサラ金から電話が来た」とよく泣いていました。
調査委員会は本気で調査しているんでしょうか。若い衆に事情聴取すれば、いろいろ出てくるはずです。
安壮富士の一番がガチンコか注射かは、支度部屋での様子を見ていれば大体わかりました。注射のときはきまって「二日酔いだ」とかいって、支度部屋で横になって寝ていました。対戦相手と話がついているからゆっくりしているし、頑張る必要がないから前夜も朝方まで飲むんです。
取組が終わったあとに「どうでした?」と聞くと、安壮富士は「勝った」「ダメだった」と話してくれるんですが、時々、「負けたけどコレだから(大丈夫)」と、胸を人差し指でつつくことがありました。これは角界では有名な“注射”を示すジェスチャーです。
※週刊ポスト2011年3月25日号