スポーツ

箕島尾藤監督 親の恩情が仇になり甲子園出場を逃した過去

尾藤公監督(右)と強氏の父子

「高校野球史上最高」といわれる試合で采配をふるった箕島高校元監督の尾藤公(ただし)氏が、3月6日に亡くなった。尾藤氏と甲子園の知られざるエピソードをノンフィクションライターの松下茂典氏がリポートする。

* * *
甲子園で数々の名勝負を演じた和歌山・箕島高校元監督、尾藤公が、3月6日午前3時37分、膀胱移行上皮がんのため死去した。68歳だった。

最期を看取ったのは、7年間に及んだ闘病生活を献身的に支えた一人息子の強(41)である。

「入院中、父は痛いとか、つらいとか、弱い姿を見せたことが一度もありませんでした」

尾藤父子と甲子園―─そこには、知られざる涙の物語があった。

1986年夏、箕島は2年生エース・強の好投で、和歌山県大会を勝ち上がったが、決勝で桐蔭に3対5で敗れた。監督の尾藤にとっては悔やんでも悔やみきれない一戦であり、「私の失言が敗戦を招いた」と語っていた。

「1回表、桐蔭に1点を先制されたんですが、5回裏にウチが2点を入れて逆転し、選手たちが守備につく際、私は大声で叫んだんです。『強、一人でもランナーを出したら代えるぞ!』と。それまでグラウンドでは、いつも『尾藤』で、『強』と呼んだことはありませんでした。甲子園は決まったも同然という油断が、その時の私を“監督”ではなく“親父”にしてしまったんです」

その後、強はランナーを出してしまう。公言した手前、尾藤は投手を交代しなくてはならなくなり、試合をひっくり返された。強は翌年夏も、県大会準決勝で吉備高に敗れ、甲子園のマウンドには立てなかった。

撮影■WEST
(写真は2010年9月23日に甲子園で行なわれた箕島vs星稜の記念試合にて)

※週刊ポスト2011年3月25日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
大村崑氏
九州場所を連日観戦の93歳・大村崑さん「溜席のSNS注目度」「女性客の多さ」に驚きを告白 盛り上がる館内の“若貴ブーム”の頃との違いを分析
NEWSポストセブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
佐々木朗希のメジャー挑戦を球界OBはどう見るか(時事通信フォト)
《これでいいのか?》佐々木朗希のメジャー挑戦「モヤモヤが残る」「いないほうがチームにプラス」「腰掛けの見本」…球界OBたちの手厳しい本音
週刊ポスト
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
連日大盛況の九州場所。土俵周りで花を添える観客にも注目が(写真・JMPA)
九州場所「溜席の着物美人」とともに15日間皆勤の「ワンピース女性」 本人が明かす力士の浴衣地で洋服をつくる理由「同じものは一場所で二度着ることはない」
NEWSポストセブン
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン