竹下正己弁護士の法律相談コーナー。今回は、「『水道が水漏れしているので修理した』と、業者に多額の修理代を請求された」という相談だ。
【質問】
水道局の検針のあと、「水道が漏水しているかもしれないので、見に行きます」という電話があり、業者が来ました。メーター付近を調べて、「水道管が水漏れしているので修理した」といわれ、修理代として17万円請求されました。あとでだまされたとわかりましたが、どうすればいいでしょう。
【回答】
自宅でした修繕工事の契約申し込みは、特定商取引法の規制する訪問販売に該当します。この法律では、契約が成立すると、事業者は法律で定める事項を記載した書面(法定書面)を渡す義務があります。消費者は、この法定書面をもらった日から8日以内に文書で申し出て契約を白紙にし、代金の支払い義務を免れること(クーリングオフ)を認めています。また、すでに施工されてしまった修繕工事については、業者が費用負担して原状回復する義務を負うことも定められています。
このようにクーリングオフは、消費者にとって強力な武器ですが、行使できる期間が短く、すぐに経過します。しかし、ご質問の場合であれば契約の取り消しも可能です。特定商取引法第6条1項は、業者が勧誘に際して「不実のことを告げる行為をしてはならない」と定めています。その中に「顧客が当該売買契約又は当該役務提供契約の締結を必要とする事情に関する事項」が含まれています。業者はうそをついていたのですから、これに当たります。
水漏れが修繕を依頼した動機ですから、うそがわかってから6か月以内であれば、この条項に基づいて契約を取り消せます。契約を取り消せば、代金の支払い義務はなくなります。しかし、施工済みの修繕工事については、クーリングオフの場合のように明確には決まっていません。
ですが、特定商取引法第6条1項の違反は、3年以下の懲役や300万円以下の罰金が科せられる悪質な行為であり、これにより不要な修繕工事を押しつけられたのですから、あなたに費用負担の必要はないと思います。
なお、あなたの場合、そもそも法定書面の交付があったのかが明確ではありません。消費者センターなどで相談してください。
※週刊ポスト2011年3月25日号