異常過熱した京大カンニング報道――。茂木健一郎とジャーナリストの上杉隆、「既存メディア」と戦う二人の最前線対談である。
上杉:茂木さんはメディアが社会構造をつくるとおっしゃった。言葉をかえれば、メディアによる洗脳で、日本人がそのことに気づいてないということです。
でも、いまやその社会構造が変わりつつある。日本のメディアは鎖国を作り出していますが、ツイッターやフェイスブックなどのネットメディアは世界とつながっているので、誰もが外と比較でき、その瞬間に、テレビで見てるものや新聞に書かれていることと違うじゃないかと気づく。
茂木:エジプト、チュニジア、リビアなどで革命が起きましたが、それと同じことが日本でも起こってるんですね。
上杉:江戸時代の末期に、黒船、ペリーが来航したとき、日本人は恐怖に駆られ、黒船を避けようとした。それと同じで、日本の新聞やテレビは、黒船が来ているのに、そんなものは存在しないといっているようなものです。現実を直視しなければ危険回避なんてできないのに。
茂木:一度、正体がわかると、急に態度を変えて、文明開化だと大騒ぎしますけどね。鬼畜米英とか叫んでいたのに、負けたらマッカーサーもヒーローになった。
だから、ナベツネさん(渡邉恒雄・読売新聞グループ本社会長兼主筆)とか、フジテレビの日枝(久)さん(フジテレビ会長)とかにツイッターをやらせりゃいい。
上杉:でも、彼らはツイッターもフェイスブックも、多分、区別がついてないんじゃないかな(笑い)。
茂木:でも、ツイッターを一度経験したら「これはなかなかいいね、君」とかいいますよ。ナベツネさんのつぶやきを読んでみたいでしょう。
上杉:それはちょっと読んでみたい(笑い)。
茂木:私も日本のメディア批判をしていますが、個々の生の人間には魅力を感じるんです。組織がダメなんだから、トップの人間が変われば、メディアも変わると思います。
※週刊ポスト2011年3月25日号