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大前研一氏 日本の東証は無為無策、座して死待つだけと指摘

世界的な「大合従連衡」もどこ吹く風。座して死を待つ東京証券取引所の“無為無策ぶり”を、大前研一氏が指摘する。

* * *
証券や金融先物の取引所の国境を越えた合従連衡が加速している。今年2月、ドイツ取引所と米NYSEユーロネクストの合併合意の発表が世界一の証取誕生としてメディアで大きく報じられたが、その数日後には私設取引システム(PTS)大手の米バッツ・グローバル・マーケッツが欧州の同業チャイエックス・ヨーロッパの買収を発表し、欧州の株式取引シェアで首位に躍り出ることになった。

これに先立ち、ロンドン証券取引所とカナダのトロント証券取引所を傘下に持つTMXグループ(カナダ)が合併の方針を明らかにし、シンガポール取引所(SGX)とオーストラリア証券取引所(ASU)も合併に合意、中国の上海証券取引所とブラジルのサンパウロ証券取引所を運営するBM&Fボベスパの新興国勢も提携方針を決めている。

こうした大再編の波に、東証はどのような戦略で挑み、グローバルに動く投資家を呼び込もうとしているのか? 残念ながら、無為無策に等しいのが現状だ。最近、東証が新たに決定した市場機能強化策は、今年のゴールデンウィーク明けをメドに、現在1時間半とっている現物株取引の昼休みを30分短縮することぐらいだ。それも世界は24時間フル稼働が当たり前の時代に、である。

そもそも東証は国際基準のルールと世界標準のシステムを導入していない。なぜなら、株券売買立会場に「場立ち」がいた時代のルールをそのままシステム化しているからだ。

「寄り付き」と呼ばれるその日最初の取引や、「引け」と呼ばれるその日最後の取引では、板寄せ方式により、売りと買いを付け合わせて値を決めるが、日本の場合、その付け合わせに様々な条件を設けているため、最初の約定値段を決めるまでに時間がかかる(寄り付きと引けの間の取引は「ザラ場」と呼ばれ、一般的には売り呼び値と買い呼び値が一致したものから早い順に次々と売買が成立していく)。

マーケットが開いても何十分も売買が成立しないことがままあるが、世界標準の株式取引の仕組みは「時間優先」による早い者勝ちの競争売買方式だ。

つまり、今の東証のシステムは立会場時代の古色蒼然としたやり方と電子技術を同居させたものなのだ。実際、東証が昨年1月に稼働させた新システム「アローヘッド」の売買注文処理は、チャイエックスの4倍の時間を要する。

※週刊ポスト2011年3月25日号

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