胸やけ、食べ物がつかえるなどの症状は、胃酸が逆流して起きる逆流性食道炎が疑われ、PPI(プロトンポンプ阻害剤)が処方される。しかし服用しても改善しない症状の中に、アレルギーと関係が深い好酸球増加が原因の「好酸球性食道炎」があることがわかった。患者は喘息やアトピー性皮膚炎などアレルギー疾患のある中高年男性に多い。局所作用ステロイドで症状が緩和する。
胃酸の逆流によって、胸やけや食べ物がつかえるといった症状が起きるのが、逆流性食道炎だ。内視鏡検査で食道に縦方向に長いびらん(粘膜のただれ)が確認される症例が約30%で、残りの70%では認められない。PPIの処方で約70%の症状が改善する。
しかし、1990年代になって、PPIを処方しても症状が改善しない症例の中に、アレルギーに関係する白血球の一種である、好酸球の増加が原因とみられる好酸球性食道炎があることがわかってきた。欧米ではここ20~30年で患者数が約10倍に増えている。日本でも2006年に島根県で、第一例目となる69歳の男性患者が診断された。
厚生労働省の研究班代表者で、島根大学医学部附属病院第2内科の木下芳一教授に話を聞いた。
「好酸球性食道炎について疫学調査を行なったところ、患者の平均年齢は51歳で、8割が男性です。約半数が喘息やアトピー性皮膚炎、花粉症などアレルギー疾患を持っていました。食物や空気中のカビなどが抗原でアレルギー反応を起こし、食道の粘膜上皮に好酸球が増え、胸やけや食べ物が食道内につかえるなどの症状が出ると考えられます」
(取材・構成/岩城レイ子)
※週刊ポスト2011年3月25日号