国内

入会金2万5000円の犬オークション トイプードル16.9万円

 生まれてから死ぬまで、犬はどんな値段をつけられるのか。ジャーナリストの山藤章一郎氏がリポートする。

 * * *
「袖ヶ浦」「湘南」「長野」ナンバー、150台分の駐車場が一瞬で満杯になった。鳥かごほどのケージをそれぞれかかえた夫婦らしき50代が、「伊豆」のワゴン車から降りてきた。

 都心に本社を置く〈犬専門オークション〉会社の会員証を胸元にぶらさげ、ふたりとも前歯が欠けている。かごのなかに手のひらにつつめるシーズーが2匹ずついた。「2か月に1回くらい、子犬が産まれたら毎回来てる」

――今日の値付けは?
「んなこと教えられないよ。ここはな、完全会員制でなかのようすは、口外できねえんだ」
 
 新横浜を出た新幹線が4、5分後に神奈川県相模川を渡る手前の駐車場脇に、体育館を低くした鉄板囲いの倉庫がある。ここで週にいちど、犬の競りが立つ。産ませて売る人・ブリーダー(breeder・繁殖、飼育者)と、ペットショップ屋が集まる。

 入会資格は、〈動物取扱業登録証〉を持つ人である。自治体で講習を受けると発行される。

 入会金は2万5000円。入場料は年間1万円。

 いちどに3匹が、会場の大画面に映しだされる。入札値段や、オスメス別、生後日数などが表示され、会員は手にした入札用リモコンのボタンを押す。競りの数字、子犬のねだんが外に漏れることはない。取材も見学も、会員から話を聞くことも主催会社から厳しく禁じられている。

 オークションが始まる2時間前でも、会場のまわりを行きつ戻りつしていると、スタッフらしき男たちが剣呑な視線を送ってきた。

 ここで落とされた子犬は、ペットショップやネットオークションで最低値段がこうつけられる。

 ×月×日、ネットのねだん。
 トイプードル16万9000円。柴犬12万9000円。シーズー11万9000円。
 ゴールデンレトリバー10万9000円。

 生後日数によって値段は大きく変動する。「可愛い」と買い手がつくのは、生後45日まで。2か月になれば急速に値打ちを落とす。売る側はそれまでが勝負、客には「抱かせてぬくもりを感じさせよ」という鉄則があるといわれている。いまは概して子犬が高く売れる。

 この日、2時間ほどですべてのオークションが終わった。さっきのシーズーの夫婦も出てきた。

――いい値がつきましたか。
 問いかけると、スタッフがすっと近づいてきた。「どちらさまですか? だめだめ、話はだめ」

※週刊ポスト2011年3月25日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

(左から)豊昇龍、大の里、琴櫻(時事通信フォト)
綱取りの大関・大の里 難敵となるのは豊昇龍・琴櫻よりも「外国出身平幕5人衆」か
週刊ポスト
セ・リーグを代表する主砲の明暗が分かれている(左、中央・時事通信フォト)
絶好調の巨人・岡本&阪神・サトテルと二軍落ちのヤクルト村上宗隆 何が明暗を分けたのか
週刊ポスト
過去のセクハラが報じられた石橋貴明
とんねるず・石橋貴明 恒例の人気特番が消滅危機のなか「がん闘病」を支える女性
週刊ポスト
女優の広末涼子容疑者が傷害容疑で現行犯逮捕された(写真は2019年)
《広末涼子逮捕のウラで…》元夫キャンドル氏が指摘した“プレッシャーで心が豹変” ファンクラブ会員の伸びは鈍化、“バトン”受け継いだ鳥羽氏は沈黙貫く
NEWSポストセブン
過去に共演経験のある俳優・國村隼(左/Getty Images)も今田美桜の魅力を語る(C)NHK連続テレビ小説「あんぱん」NHK総合 毎週月~土曜 午前8時~8時15分ほかにて放送中
《生命力に溢れた人》好発進の朝ドラ『あんぱん』ヒロイン今田美桜の魅力を共演者・監督が証言 なぜ誰もが“応援したい”と口を揃えるのか
週刊ポスト
大谷翔平(左)異次元の活躍を支える妻・真美子さん(時事通信フォト)
《第一子出産直前にはゆったり服で》大谷翔平の妻・真美子さんの“最強妻”伝説 料理はプロ級で優しくて誠実な“愛されキャラ”
週刊ポスト
「すき家」のCMキャラクターを長年務める石原さとみ(右/時事通信フォト)
「すき家」ネズミ混入騒動前に石原さとみ出演CMに“異変” 広報担当が明かした“削除の理由”とは 新作CM「ナポリタン牛丼」で“復活”も
NEWSポストセブン
万博で活躍する藤原紀香(時事通信フォト)
《藤原紀香、着物姿で万博お出迎え》「シーンに合わせて着こなし変える」和装のこだわり、愛之助と迎えた晴れ舞台
NEWSポストセブン
川崎
“トリプルボギー不倫”川崎春花が復帰で「頑張れ!」と声援も そのウラで下部ツアー挑戦中の「妻」に異変
NEWSポストセブン
最後まで復活を信じていた
《海外メディアでも物議》八代亜紀さん“プライベート写真”付きCD発売がファンの多いブラジルで報道…レコード会社社長は「もう取材は受けられない」
NEWSポストセブン
不倫報道のあった永野芽郁
《“イケメン俳優が集まるバー”目撃談》田中圭と永野芽郁が酒席で見せた“2人の信頼関係”「酔った2人がじゃれ合いながらバーの玄関を開けて」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! ゴールデンウィーク大増ページ合併号
「週刊ポスト」本日発売! ゴールデンウィーク大増ページ合併号
NEWSポストセブン