原油価格の高騰が、日本経済に悪影響を与えることが懸念されている。しかし、金融コンサルタントの菅下清廣氏はこう指摘する。
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日本にとって、原油の高騰は経済の足かせになると心配する声も多いのですが、これは間違いです。断言しておきますが、現在1バレル=100ドルを超えたと大騒ぎしている原油価格が、たとえ140ドルになったとしても、日本への影響は限定的です。かつてオイルショックで大打撃を受けた時の為替レートは1ドル=280円でしたが、今は当時に比べて、円には3~4倍の価値があり、通貨の強さが全く違います。
また、原油は「燃料」としての価値と、化学工業などの「原料」としての価値があります。日本は資源を輸入して加工し、付加価値をつけて輸出するという能力で、ドイツと並んで世界トップです。原料価格が上がれば、商品価格も上がりますから、むしろ歓迎すべき局面ともいえます。
さらに、原油価格の高騰は、日本が最も得意とするクリーンエネルギー技術の需要を高めます。この1月、オバマ大統領は一般教書演説で、35年までにアメリカの消費エネルギーの80%を、原子力、太陽光、風力発電などのクリーンエネルギーに転換すると述べました。
これらの技術は、いずれも日本企業が最先端を走っています。世界的に見ても、これから日本経済に大チャンスが訪れます。日本も早く政治の混迷が終わって優秀なリーダーが現われ、大胆なエネルギー政策を打ち出すべきだと思います。
※週刊ポスト2011年3月25日号