未曾有の被害をもたらすこととなった東北関東大震災とそれを原因とした大津波。有数の地震国でありながら、津波に対する日本人の危機意識は高かったとはいえないのだ。
気象庁による警報は、シミュレーションデータを用いて津波の高さと日本への到達時間を予測して発表されるもので、3メートル以上が予想されると「大津波警報」、1~2メートルは「津波警報」、50センチメートル程度なら「津波注意報」となる。さらに津波の到達予想時刻や予想される高さなどが「津波情報」として知らされる。
しかし2010年のチリ地震の際に17年ぶりに国内で発令された大津波警報の際には、東北3県の住民のうち避難勧告に従ったのはわずか4%だった。
また、海に囲まれた国でありながら、津波と国土の“接点”である港湾施設の対策も完全ではないといわれている。NPO防災情報機構の伊藤和明会長はこう解説する。
「津波そのものの被害とともに漂流物に火がついて燃え広がる危険がありますが、現状の港湾対策は決して充分とはいえません。自治体やコンビナート施設を持つ企業が防波堤の建設を進める必要があります」
一方で“防災先進県”も存在する。東海地震を想定する静岡県は2004 年、総工費43億円をかけて高さ約40メートルの巨大水門「びゅうお」を沼津港に建設。震度6弱以上の揺れを検知すると、内港への津波の侵入を防ぐため水門がおよそ5分で閉鎖される。周辺の住民9000人の“命の砦”として期待されている。こうした自治体の津波対策が今後は改めて注目されそうだ。
今回の惨事から得た貴重な教訓を無駄にしてはならない。
※女性セブン2011年3月31日・4月7日号