生まれてから死ぬまで、犬はどんな値段をつけられるのか。ジャーナリストの山藤章一郎氏がリポートする。
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東京モノレール〈流通センター駅〉からバスで15分ほどかかる東京湾のヘリに、東京都〈殺処分〉場がある。羽田を飛びあがった飛行機が屋上すれすれ滑空していく。
「動物愛護相談センター 大田区城南島出張所」職員たちは小学校などに出向いて動物たちとのふれあいを教える一方で、犬猫の保護管理に務めている。小杉智彦所長の話。
「持ち込んできた飼い主さんのやむにやまれぬ事情をお聞きし、新しい飼い主を見つけてくださいといいます。それでもダメなときだけ、引き取ります。通常犬は3000円、子犬は600円です」
殺処分の機器は、大人が寝て少し大きいほどのボックスで、炭酸ガスを送るパイプが上部に通じている。1日3回のフル稼働で42匹を処分できると小杉所長は教えてくれた。
「遠隔操作で、最初の5分で炭酸ガス濃度を致死量まであげ、その後15分放置します。その20分が処理時間です。犬たちは眠るように動かなくなります。扉を開けて、胸に聴診器を当てて死亡の確認をします。犬も人間に大事にされ、自然な死を迎えられ、殺処分が少しでも少なくなることを私たちは祈っています」
共に長く暮らして終末を迎える家族で――葬儀全般、供養に応じるビジネスもある。
P社の例――個別の火葬、犬の重さ10キロまでは2万5200円、25~30キロは4万2000円。
その骨を個別の棚に納める費用は年間2万6250~9万4500円。共同墓地へよその犬と一緒に納骨すれば1万500円。これ以外に、P社が提携した寺で年に一度の法要を頼むこともできる。5万円。
犬猫霊園有料墓地に埋葬をお願いする方法もある。2年で3万円。
※週刊ポスト2011年3月25日号